1970年代、青春ドラマとして絶大な人気を集めた「俺たちの旅」(日本テレビ系・75~76年)。その50年後を、主演の中村雅俊が自ら監督して描いた映画「五十年目の俺たちの旅」が、1月9日から公開される。
三流大学生のカースケ(中村)とオメダ(田中健)、そしてカースケの故郷の先輩・グズ六(秋野大作)の3人が、人生に悩みながら自分の生き方を見つけていく物語。主人公たちはさまざまな人生の壁にぶち当たり、切なさを抱えながらそれを乗り越えて進んでいく、リアルな人間模様が視聴者の共感を呼んだ。それだけでなく、カースケたちがたむろする東京・吉祥寺と井の頭公園周辺は、地方から上京する若者の憧れの町になり、ドラマがきっかけで住みだした人々も多い。言わば“聖地巡礼”の先駆けといった感じで、その後の吉祥寺の繁栄に一役買ったドラマである。連続ドラマの終了後も、「俺たちの旅 十年目の再会」(85年)、「俺たちの旅 二十年目の選択」(95年)、「俺たちの旅30年SP 三十年目の運命」(2003年)とスペシャルドラマが放送され、息の長いシリーズになった。
今回の作品はシリーズの主軸になった斎藤光正監督が2012年に亡くなったため、メイン脚本家の鎌田敏夫が、作品のことを最も熟知している中村雅俊を監督に指名。中村もこれを受けて、自身初監督の映画に挑んでいる。最新作ではカースケが小さな町工場の社長、オメダは鳥取県米子市の市長で次期知事選の出馬を控えた状態、グズ六は妻が運営する介護施設の理事長に収まっている。この3人に、30年目のスペシャルのときに病死した、カースケの恋人・洋子(金沢碧)の思いを引き継ぐ形で、オメダの妹・真弓(岡田奈々)が物語に絡んでくる。
若い工員に、なんでも体当たりでぶつかってきた自分の人生観を伝えるカースケ。死んだ母親と暮らした神楽坂の実家に人生の最期は戻りたいと願い、鳥取での生活を捨てるべきか悩むオメダ。相変わらず若い女性によろめく、飄々とした老後を送るグズ六。
特に洋子を思い出すエピソードで、昔の作品からの回想シーンがかなり登場するため、かつてのシリーズを見ていない人にはわかりにくい部分があるが、70年代の青春をそのまま引きずったようなテイストは、ファンを裏切らないものになっている。ノスタルジーでありながら、老境に差し掛かった彼らが現在進行形でつづられるところは、この作品ならではの味わいだ。
演じる俳優の年齢に合わせてキャラクターも年を重ねていく作品には、映画だとフランスのクロード・ルルーシュ監督、アヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャンが主演した「男と女」がある。1966年の第1作でカーレーサーと映画のスクリプターとして出会った男女の、20年後を描く「男と女Ⅱ」(1986年)、そして記憶を失いつつある男性をヒロインが訪ねる52年後の「男と女 人生最良の日々」(2019年)まで、こちらも半世紀にわたる二人の人生模様が描かれた。しかし日本の作品では、テレビドラマの「ふぞろいの林檎たち」(TBS系)が全4シリーズで14年(1983~1997年)、「北の国から」(フジテレビ系)がスペシャルドラマを含めて21年(1981~2002年)、「あぶない刑事』(日本テレビ系)が最新映画まで38年(1986~2024年)であることを思うと、同一キャストの作品として「俺たちの旅:がいかにまれなロングシリーズかがわかるだろう。その魅力は何なのか。今回の映画で再確認してはいかがだろうか。
(金澤誠/映画ライター)
◇ ◇ ◇
今年、世を席巻した「国宝」。関連記事【もっと読む】「国宝」が22年ぶりに邦画歴代興行収入1位を更新 大ヒット作“20年周期”の法則…では、同作をめぐるヒットの法則を分析している。

![【Amazon.co.jp限定】鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 豪華版Blu-ray(描き下ろしアクリルジオラマスタンド&描き下ろしマイクロファイバーミニハンカチ&メーカー特典:谷田部透湖描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)付) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Y3-bul73L._SL500_.jpg)
![【Amazon.co.jp限定】ワンピース・オン・アイス ~エピソード・オブ・アラバスタ~ *Blu-ray(特典:主要キャストL判ブロマイド10枚セット *Amazon限定絵柄) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51Nen9ZSvML._SL500_.jpg)




![VVS (初回盤) (BD) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lAumaB-aL._SL500_.jpg)


