〈社会保障全体の改革を推進することで、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す〉──。これは自民党日本維新の会の間で10月に交わされた連立政権合意書の一文。

聞こえは良いが、肝心の中身は与党主導の密室協議でスッタモンダしている。維新の“十八番”の改革は「名ばかり」に終わりそうだ。


 維新は当初、「医療費の年4兆円削減」を目指してOTC類似薬の保険適用除外を求めたが、自民との実務者協議で折り合いがつかずに断念。保険適用は残したまま、患者に追加負担を求める方針に転換していた。


 自維は現在、追加負担を課す薬剤の対象範囲や負担割合をめぐって調整中。実務者レベルでは両党間の隔たりが埋まらないため、自民の小林政調会長は18日の会見で「担当者のレベルを上げて議論することになった」と明かした。今後、月内をメドに自維の政調会長間で合意を目指すという。


 議論のたたき台になっているのが、政府がOTC類似薬の負担見直しについて試算した財政影響だ。例えば、抗アレルギー薬や解熱鎮痛薬など約1100の成分を対象に、薬剤費の10割を患者負担とした場合、医療費の削減効果は約2.1兆円。逆に、対象成分を約20に絞り、患者負担を4分の1に抑えると削減効果は約400億円にとどまる。


■政策効果は期待できない


「維新はOTC類似薬の負担見直しで『数千億円規模の医療費削減』を目指しており、最低でも約120の成分数を対象にしたい。この中には、ステロイドや抗アレルギー剤、解熱鎮痛剤が含まれます。

影響を受ける人数は数千万人に上るとみられますが、政府は具体的な数字を出していません。成分数120を対象に、患者へ薬剤費の2分の1負担を課しても医療費削減は約4100億円程度。医療費全体のわずか0.8%に過ぎません。これで果たして保険料が引き下がるのか。追加負担を課される人が続出するだろうと予想されるのに、政策効果は期待できません」(医療団体関係者)


 ちなみに試算には、子どもや慢性疾患を抱える人、低所得者への配慮は加味されていない。つまり、実際の削減効果は試算よりも減る可能性が高いのだ。


「医療費を削りたい財務省と維新の目的が一致しているからか、政府が試算を示したのは与党側だけ。『身を切る改革』どころか、『患者の身を切る改革』になりかねません」(永田町関係者)


 労多くして功少なし──。「名ばかり改革」の維新に待ち受けるのは自爆の2文字だ。


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