【今週グサッときた名言珍言】


「隠してくれてて、よかった」
狩野英孝テレビ朝日系「ロンドンハーツSP」12月13日放送)


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 狩野英孝(43)といえば「50TA」名義で音楽活動もおこなっている。もともとは2009年に「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)のドッキリ企画で生まれたキャラクターだが、アルバムも発売し「ミュージックステーション」などの音楽番組にも出演。

ライブを開催すれば毎回超満員だ。


 そんな50TAになんと、「King&Prince」から楽曲提供の依頼が舞い込んだ。だが、狩野は、新人バーチャルアイドル「KPDY」からの依頼だと聞かされて楽曲を制作。いざ、キンプリが歌っているのを見て漏らした一言が今週の言葉だ。もし最初から知っていたら、プレッシャーでいろいろ考えて、素直に作れなかった、と。


 狩野の作るキャッチーなメロディーや独特の言葉選びは、キンプリだけでなく、寺岡呼人やヒャダイン、いしわたり淳治ら音楽の専門家たちも高く評価している。


 狩野が音楽に目覚めたのは、小学校高学年の頃。「L'Arc~en~Ciel」や「SOPHIA」のCD、コンサートビデオ、PV集を買い漁った。中学から高校までは音楽漬け。高校ではバンドを組み、地元のアーケード街で朝方までストリートライブをしていた。


 宮城から上京後、日本映画学校在籍時も路上ライブを続け、100人以上を集め、同じ小田急線「新百合ケ丘」駅周辺で歌っていた「いきものがかり」よりも動員していたという“伝説”は有名だ。当然、本人も「このままプロになるんだろうな」という気持ちもあった(blueprint「Real Sound」20年7月13日)。


 しかし、卒業のときにマセキ芸能社のお笑いライブを見て、なんて芸人はカッコいいんだと思い、芸人を志すようになった。「昔から自分にはナルシストみたいなところがあって。どうしても、カッコいい仕事に就きたかった」(同前)からだ。


「ラーメン・つけ麺・僕イケメン」のナルシシストキャラでブレークするが、素に近いから楽だった。その手の振り方も、高校の頃に好きで真似していたHYDEのそれ。狩野は自分がカッコいいと思っていることを素直にやっているだけなのだ。


 50TAの楽曲も「僕はふざけてるつもり一切ない」「100%ストレートに作ってます」(「Real Sound」21年2月20日)と言い切っている。


 狩野には「面白いか、面白くないか」よりも先に、「カッコいいか、カッコ悪いか」という判断基準があるのだ。特に芸人には、カッコいいことをやるのはカッコ悪いという価値観を持つ人が多く、そこに照れや作為が生まれる。だが、狩野は違う。どこまでもピュアで本気。その邪念のなさが具現化された姿が50TAなのだ。


(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)


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