お互いに文句を言いながらも信じあってる

 放送開始50周年を迎える伝説のドラマ「俺たちの旅」が来春、ついに映画化する。タイトルは、「五十年目の俺たちの旅」(来年1月9日公開)。

映画初監督となる中村雅俊(カースケ)、秋野太作(クズ六)、田中健(オメダ)、岡田奈々(真弓)が2003年のスペシャルドラマ以来となる22年ぶりに再集結する。オメダ役の田中健に聞いた。


     


 ──「俺たちの旅」は、まさに芸能史に残る人気ドラマでした。


「本当にそうですね。今回、50年経って、また同じメンバーでやれるというのは、世界的にも例がないと思います。まさに奇跡ですよ。このメンバーは本当にすごいですよ。熱量も昔と変わらないし」


 ──9月に行われたコンサートでは過去の映像も流れたそうですね。


「リアルタイムで放送を見てくれていた皆さんも、〝あのときはこうだったね〟なんて語り合いながら楽しんでいただけたと思います」


 ──この作品は田中さんにとってやっぱり特別ですか?


「そうですね。自分にとっては〝これで終わってもいい〟と思えるくらいの作品です。デビュー間もない21歳の頃に始まって、24、25歳くらいまでの3年間、本当に駆け出しでした。今でもファンの方から『オメダ』なんて声をかけていただきますから。

うれしいことです」


 ──当時の現場の雰囲気も、すごくよかったと聞きました。


「ええ。先輩だった秋野さんも圧をかけてくるような方ではなかったし、スーッと馴染めました。同い年の中村君とは、撮影が終わると、よく飲みに行って、そこに監督もいたりして、ギターを持って歌ったりしていましたね」


 ──そのころからバンド活動も?


「やってましたね。元々バンドをやってましたから、自然とそういう流れになって。中村君とは同い年で、ウマが合ってね。今でも年に1回くらいは会ったりします。一緒にゴルフに行ったりね」


 ──この作品の中で、忘れられないシーンやセリフはありますか。


「最後の詩がでてくるシーンで、短いカットを重ねるシーンかな。あそこは意外と大変だったんですよ。一日がかりで、場所もどんどん移動して、短いカットを重ねていって。ああいうのは面白かったですね。

芝居はアドリブですよ。ああいうのを重ねていくうちに、信頼関係もできていって、演者同士の信頼感も強くなっていったと思います」


 ──だからこそ、今もこうして再集結できるわけですね。


「そうですね。本当に同窓会みたいな雰囲気ですから。3人とも個性が強いけど、誰か1人でも違ってたらこの空気感はなかったと思います。当初は、僕の役は違う役者さんがやる予定だったんですよ。岡田奈々ちゃんも、初々しくてかわいかったしね。これが50年も続く関係になるとは驚きですよ。そういう意味では出会いって本当に不思議ですよ」


 ──ところで、田中さん、私生活では、高校生の娘さんのお弁当作りをずっと続けてらっしゃるんですね。ブログで拝見しました。


「娘のために毎朝、5時半には起きて作ってますよ」


 ──写真を見ると、彩りも栄養面も完璧ですごいですね。


「プレッシャーもあるけど、喜んでくれるから続けられるんですよね」


 ──キャラ弁なども作られてましたね?


「『鬼滅の刃』が一番バズりました(笑)。

でも娘は冷静なんですよ。あまりリアクションしない」


 ──すごく愛情のこもったお弁当です。


「でも、妻は厳しいんですよ(笑)。台所用品の使い方など細かく指示されますから。料理を始めたのはコロナがきっかけなんですけどね。外に出られないから、自然と料理や植物観察とかいろいろ試すようになって。それでだんだんと料理にハマっていきました。今は完全に娘中心になりましたね。ブログを読んでくれる人がいるので、やめるにやめられなくなってますが、高校卒業までやりきろうと思ってます」


 ──ご自身の健康管理も徹底されているとか?


「お酒もたばこもやめましたし、脂も控えています。肝臓のこともあって、食生活にはかなり気をつけていますよ。2013年に急性膵炎を経験してからは、本当にまいって、節制するようになりましたね」


 ──日々の積み重ねが、今回の再集結にもつながってるんですね。


「そう思います。

元気でいることが何よりですから」


 ──今後、60周年もあるかもしれないですね。


「いや、100まで生きるつもりでいれば、もう一度くらいできるかもしれないですね(笑)」


 ──「日刊ゲンダイ」の読者はまさにドラマをリアルタイムで見ていた世代ですが、何かメッセージをいただけますか。


「やっぱり"仲間を信じること"ですね。この作品でもそれが一番大事なテーマだったと思う。人って皆、生き方も価値観も違うし、説明のつかないこともたくさんある。でも、それを認め合って、信じ合える仲間がいれば、それだけで幸せだと思うんですよ」


 ──なるほど。


「お互いに文句を言いながらも根底では信じあってる。それが50年経っても続いているって、本当にすごいことだと思います」


 ──最後に、映画公開に向けて、ファンの方へ一言お願いします。


「やっぱり『お祭り』として楽しんでいただきたいなと。亡くなった西田敏行さんは、『老いを楽しむ』っておっしゃってましたが、まさにそういう気持ちで。今しかないこの時間を、昔の仲間たちと一緒に楽しんでほしいですね。〝切なさ〟を抱えながらも、楽しく前向きに生きる。

それがまさに俺たちの旅なんですよ」


(聞き手=平川隆一/日刊ゲンダイ)


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