【増田俊也 口述クロニクル】#71


 作家・増田俊也氏による連載。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。

第1弾は写真家の加納典明氏です。


  ◇  ◇  ◇


増田「高市さんなら十分期待できそうですけどね」


加納「そこまでやれるかどうかは微妙だな。まあ、選挙という形で選ばれたということがプラスとマイナス、両方あると思う。だからどこまでやっていいかという先進性と、守るというポジションと両方ある。そのコントラストを彼女は自身の中でどういうふうに考えているか知らないけど、とりあえずやっぱり前へ進むことだよ。止まったら駄目。俺的な考えからすると、やっぱり前へ行くしかないんだよ」


増田「とにかく前へ」


加納「そう。そういった迫力がもっと欲しい。トラクターのような馬力で前へ進んでほしい。1秒も留まらず、国自体を前へ行かせる。そこで途中でこけることがあっても俺は構わないと思う。法律を破ったり戦争をやったりって、それはまずいと思うけれども、それ以前の日常的なレベルとか経済的なレベルとかでは、思い切ったことを断行していく肚が大切だね」


増田「なるほど」


加納「ここ数十年の日本の国政には、国全体を考える前に個人がいなかったと俺は思ってる。

日本ということを本当にある意味いい形で、右翼的であるとか左翼的であるとか、そういう風っぽいやり方じゃなくて、精神を持った先進的日本人と日本を作っていってほしい」


増田「はい」


加納「そういう人たちが丁々発止に本気でやりあって、世界ともやりあって、いろんな混乱を作ればいいと思う。混乱がものを生むわけだから」


増田「なるほど」



混乱が物を生む


加納「要するに、四捨五入とか足して引いて『これが答えです』なんて時代の進化ってのは測れるわけないから、まずやってみること、まず前へ行ってみること。日本はなんだかんだ言って前へ行ってるよなと国民全体にわかるように。世界から見てもそう思われるぐらいの、要するに先進性というか行動力というか、あっていいと思いますね。ただ、戦争と犯罪的なことだけは自制することが前提となっていきますけどね」


増田「高市さんだったら僕はできるのではと思ってるんです」


加納「問題は周りですね。彼女をフォローアップする周りはどういうチームというか、そこの問題は大きいと思いますね」


増田「そうですね」


加納「彼女一人が全ての責任を背負うことは無理な話だし、彼女一人で全てを生み出せったって無理な話ですから、そこがそのチーム高市という質量というんですか、それをはっきり測りたいし、見たいですね。それは僕だけじゃなくて国民全体が考えていることじゃないかな。チーム高市って質量はどうなんだろうと。そういうことは伺ってみたいですね」


増田「はい」


加納「で、やっぱりその高市氏には期待せざるを得ないし、初めての女性ということで、なんか変にそこに期待することもないし、やっぱり一人の人間として、たまたま女性であるということでしかないわけだから、そこにアカデミックというか、古典的なままの考えをそこに持ち込まない方がいい。一人の人間としてしっかり見切るというか、判断していくということは国民側も大事だと思いますね」


(第72回につづく=火・木曜掲載)


▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。

69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。


▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。


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