なぜ患者にツケを回すのか。今年3月に凍結された高額療養費制度の新たな見直し案について、片山財務相と上野厚労相が24日、来年度予算案を巡る閣僚折衝で合意。

来年8月から患者負担の上限額が段階的に引き上げられていくことになった。


 高額療養費は患者の自己負担を一定に抑える制度。現状、4つの所得区分に応じて負担上限額が設定されている。例えば、年収370万~770万円なら月額8万100円程度だ。


 昨年末、石破政権が示した「旧見直し案」は、所得区分を12に細分化し、年収650万~770万円なら上限額を最大13万8600円へと段階的に引き上げる計画だった。しかし、難病患者ら当事者の声を無視した一方的な議論が反発を呼び、今年3月、石破が「凍結」を表明するに至った。


 こうした経緯があり、今回出てきた「新見直し案」は「当事者の声を踏まえた」はずが、結局、患者負担増はそのまま。所得区分を旧案同様に細分化したうえで、来年8月から段階的に引き上げる。年収650万~770万円なら最終的な上限額は11万400円。実に約38%の負担増だ。


 一応、過度な負担にならないように年間上限額の新設や、直近12カ月以内に療養費制度を3回利用した患者が4回目以降は負担軽減される「多数回該当」の上限額を据え置くなど、一定の配慮は見せている。


 しかし、これはあくまでも難病患者にとって最低条件であり、十分条件ではない。

新案について、全国がん患者団体連合会などからは〈月毎の限度額については十分に抑制されていない〉との声が上がっている。


 引き上げ撤回を求める全国保険医団体連合会の事務局次長・本並省吾氏が言う。


「70歳未満で高額療養費制度を使っている人のうち、年1~3回の利用者が8割を占めます。つまり、現役世代の多くがいざというときに負担増の憂き目に遭うのです。病気になれば収入が断たれるうえ、負担増によって制度を利用しにくくなるのに、収入減に関して議論・検討された形跡はありません。現役世代が高い保険料を納めているのは、万が一の時の安心のためであり、将来のリスクに対して保障を削るような政府の見直し案は到底、看過できません」


■OTC類似薬の負担見直しは「患者に対する罰金」


 負担増の波は療養費制度だけではない。OTC類似薬の負担見直しによって、抗アレルギー薬のアレグラや解熱鎮痛剤のロキソニンなど77成分、1100品目を対象に薬剤費の25%が追加料金として課される見込みだ。政府は来年度中に実施を目指す。


「そもそも、25%の追加料金は『保険給付率は将来にわたり7割給付を維持する』と明文化した健康保険法の付則に反しています。患者に対する罰金以外の何物でもありません」(本並省吾氏)


 高額療養費もOTC類似薬も、見直しはすなわち患者負担増である。来年から本格化する「病人増税」を許してはダメだ。


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