大河ドラマ「豊臣兄弟!」はまずまずのスタートを切ったが、NHKのもうひとつの時代劇「浮浪雲」(NHK・BS)も楽しみである。幕末の品川宿を仕切る問屋場「夢屋」の頭・雲(佐々木蔵之介)は、無類の酒好き女好きで、家業は番頭にまかせっきり。
そんな雲は宿場の面倒ごとを口八丁手八丁で片付け、困っている人は助け、威張ってるヤツにひと泡吹かせる。仕込み杖を振るえば、そこらの侍では歯が立たず、裏の顔もあるようで、一声かければ街道中の雲助が集まり、徳川の殿様ともタメ口が許されている。
「雲の生き方は、勝ち組・負け組、日本人ファーストや排外デマ、確証バイアスと誹謗中傷などギスギスしたこの時代を、それって人を幸せにしないよねと批判し、『働いて働いて』に対する痛烈な皮肉なんですよ。雲のように何事にも執着せず、穏やかにのびのびと生きようよという、痛快でコミカルな人情時代劇になってます」(ドラマ批評家)
■たけしや渡哲也よりも佐々木蔵之介が似合う
原作は44年も続いたジョージ秋山の伝説の人気漫画。これまでも、渡哲也、ビートたけしの主演でテレビ朝日とTBSがドラマ化している。なかでも今回の佐々木は、漫画のイメージに最も近いと評判がいい。
もともと「浮浪雲」のようなライト時代劇は、NHKの得意とするところだ。「小吉の女房」「大富豪同心」「善人長屋」など傑作が多い。「浮浪雲」は勝海舟、沖田総司、近藤勇、清水次郎長、坂本龍馬、楠本イネらも絡み、エンタメ度は一段と高い。
それも、よく知られたイメージとはまったく違うキャラクターで登場する。
清水次郎長は義侠心にあつい親分ということになっているが、ごろつきどもの頭目のようだったし、坂本龍馬は志士というよりお調子者の酒飲みだ。
「『SHOGUN 将軍』『侍タイムスリッパー』などのヒットで、時代劇ブームが来ています。でも、『水戸黄門』『大岡越前』のような殿様とチャンバラの時代劇ではなく、現代人にも共通する人間くささをコミカルに、またシリアスに描くネオ時代劇です。NHKもBS時代劇に力が入ってます」(テレビ情報誌編集デスク)
番頭・欲次郎役のイッセー尾形と佐々木のアドリブ乱発の掛け合いは見逃せない。
(コラムニスト・海原かみな)

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