「今夜、宇宙の片隅で」(1998年/フジテレビ系)

 和歌山で起きた事件の影響で、テレビからカレーのCMが消えた1998年の夏。キャミソール姿で女の子たちが闊歩していたあの夏。

ドラマフジテレビの月9ではなく、カンテレ制作の火曜夜10時枠「GTO」が独走していた。1年前の夏は竹野内豊とビーチで男の色気をふりまいていた反町隆史(現在52)が、“ピン”でも数字が取れることを証明したのだった。
♪ポイズン~


 そんな夏、月9と並ぶフジの看板枠“木10”で放送されていたのが「今夜、宇宙の片隅で」。 


「古畑任三郎」シリーズで評価と人気を不動のものにした脚本家・三谷幸喜(当時37)が初めて挑んだラブストーリーだ。


 出演は西村雅彦(現・まさ彦=当時38)、飯島直子(当時30)、石橋貴明(当時36)のメインキャストに、ベテランの梅野泰靖さん(当時65)を加えた4人のみというシンプルな構成の“大人の恋物語”で、舞台はニューヨーク。画面に映るのはほとんどアパートの中だったけど。


 主人公の耕介(西村)が、とにかく情けない男。“運命の女”と思い込んだ真琴(飯島)の気を引こうと、猫アレルギーなのに彼女が飼っている猫の“渡辺くん”を手なずけようとマタタビを手にするも失敗したり、彼女の不倫相手に殴り込みに行ったつもりがパンチパーマをかけられて帰ってきたりと、やることなすこと絶望的。


 古畑任三郎にさんざんイジられる“今泉くん”を思わせる役を、きっちりと楽しませてくれた。男の愚かさ、実直さ、浅はかさ、不器用さ、恋するゆえに何もかもグダグダになってしまうところは、笑いながらもグッとくる、西村雅彦の真骨頂だ。三谷幸喜や大石静に愛されるのも納得。


 三谷が敬愛するビリー・ワイルダー監督の「アパートの鍵貸します」(1960年)をイメージして作られたこのドラマは、初回こそ平均視聴率が16.9%だったものの、1ケタに落ちる回もあって全12話の平均視聴率は11%台。

当時としては惨敗だった。


 制作発表の時に「視聴率が取れそうな要素は全部省いた」なんて言っていた三谷も、実際はヘコんだらしい。でもでも、数字だけみれば“スベった”ようでも、それが彼の評価を落とすことにはならなかったのは、後の映画のヒットが証明している。


 数字を狙わずに自分が面白いと思うものを追求できること、それを視聴率20%がヒットの条件といわれていた時代に堂々とやってのけたこと。そして、それを許したフジテレビの懐というか三谷への信頼と、全編NYロケという大盤振る舞いもすごい。「GTO」はグレートだけど、こっちもグレート!


(テレビコラムニスト・亀井徳明)


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