【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】
週刊新潮(2月19日発売号)が創刊70周年を迎えた。
だが、記念合併号とは思えないほど薄い。
新潮社の創立は1896(明治29)年。それから60年後の1956年2月6日に、週刊新潮は出版社が発行する初めての週刊誌として創刊された。新聞社のような大勢の記者がいるわけでもなく、編集者の多くは事件取材などしたことのない人間ばかりだった。
週刊朝日やサンデー毎日が100万部といわれていた時代、記者が少ない出版社系の週刊誌が成功するわけはない。他の出版社もみなそう思っていた。
創刊号の表紙は文芸春秋漫画賞を受賞したばかりの谷内六郎。戦後の名残をとどめる家並みを背景に、少女が風で傘を飛ばされそうになっている。
私が編集長だったら、この絵を今号の表紙に使うだろう。いい絵である。
創刊号発売当日、社員が宣伝隊をつくり、宣伝カーで都内を巡回した。
時代は違うが、講談社(当時は大日本雄辯會講談社)が雑誌「キング」を創刊した1924(大正13)年には、社員全員が全国の友人知人に手紙やはがきを書き、チンドン屋が日本中「キング創刊」を触れ回ったという。当時キングは100万部を発行した。
新潮の創刊号は定価30円。30万部を刷り、たちまち完売した。半年後には50万部。同業他社が冷ややかに見る中での大成功だった。
当時のサラリーマンの出勤風景、朝の東京駅、都心のオフィス街の写真が載っている。あの頃は、「明日は今日よりもよくなる」と素直に信じられた時代だった。
新潮は、グラビアページでその時代を象徴する「主役の表情」を取り上げた。初回は女優・有馬稲子である。何という美しさ! 今の女優を自称しているタレントたちとは月とスッポンである。
週刊新潮が成功するのを見て、週刊文春、週刊現代が次々に創刊され、新聞社系週刊誌にとって代わり、1990年代の終わりまで、「出版社系週刊誌の黄金時代」を築くのである。新潮の編集方針である「新聞・テレビにできないことをやる」「権力者たちのスキャンダルを暴く」「大新聞批判」は、他の週刊誌にも受け継がれた。新潮の記事作り、タイトルのつけ方を「お手本」にしながら、私たちは週刊誌編集者として育っていったのだ。
2000年以降、雑誌も出版界全体の売り上げも右肩下がりになっている。薄い新潮をパラパラめくりながら、週刊誌の栄枯盛衰を懐かしく思い出していた。
その新潮から「これぞ新潮」という記事を紹介しよう。ミラノ・コルティナ2026冬季五輪ではコンドームを1万個配布したが、大会3日目になくなってしまったと報じている。五輪参加選手は2900人なのになぜ? こうした疑問は新聞、テレビからは出てこない。新潮によれば、コンドームの配布は1988年のソウル五輪から始まったという。当時は8500個だったが、92年のバルセロナ五輪では9万個に増産。その後、10万個前後で推移したが、2016年のリオ五輪では何と45万個も配られたそうだ。Viva!
21年の東京五輪では、オカモトなど国産4社が、自慢の高級品を合計16万個製造したそうだが、コロナ禍だったので「お土産」として配られたという。
今回のミラノ・コルティナ五輪でも、「包装に五輪のマークが印刷されているので、自分や友人用のお土産として大量に持ち去られるようです」(スポーツ紙デスク)。
ノルウェーのクレボ選手の部屋には、11個の金メダルの横に記念のコンドームも置いてあるのだろうか? (文中敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

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