「助けてください、助けて……」


 両手両足をロープで縛られた中年男は、地面にうずくまったまま絞り出すような声で周囲に助けを求めたという。


 先月18日、山形県寒河江市で男性が2人組の男に連れ去られ、約80万円を奪われたとされる事件。


 県警寒河江署は19日、強盗事件を自作自演し、警察の業務を妨害したとして、虚偽申告した「西村山広域行政事務組合消防本部」朝日分署長の佐藤光征容疑者(54)を偽計業務妨害の疑いで逮捕した。


■自身で両手両足をロープで縛り


 2月18日午後5時45分ごろ、佐藤容疑者は自身が運転する車で自宅から2キロほど離れた楯山公園を訪れ、徒歩で「朝日少年自然の家」の敷地内に移動した。用意したロープで手足を自分で縛り、その場に横たわり、通りがかった施設職員に「強盗に遭った」と訴えた。驚いた職員が近くにいた工事関係者に頼み、110番通報した。


「事件」のいきさつについて、佐藤容疑者は警察にこう説明していた。
<午前10時30分ごろ、自宅を出たところ、2人組の男から呼び止められて包丁の様なものを突き付けられ、現金80万円を奪われた上、犯人たちに脅されて車を出すように言われ、2人を乗せて車を運転し、110番通報(午後5時49分)の少し前ごろ、楯山公園まで移動したところで解放された>


 これを受け、県警は県内に緊急配備を敷き、付近の道路で検問を実施するなど大騒ぎになった。


 佐藤容疑者は被害者として聞き取り調査を終え、自宅に戻ったが、一夜明けた翌19日朝、事態が一変。家族から寒河江署に「本人が『嘘をついていた』と言っている」と電話があり、すべて狂言だったことが判明した。


「任意で事情聴取を行ったが、説明に一貫性がなく、第三者の介在も認められなかった。不審点や矛盾があったため、本人に問いただしたところ、『嘘でした』と犯行を認めた」(捜査事情通)


 佐藤容疑者は事件当日の朝8時半、朝日分署に出勤。9時から「1時間の年休」を申請して分署を出たが、1時間経っても職場に戻らず、そのまま連絡がつかなくなった。佐藤容疑者は消費者金融から借り入れがあり、返済が滞っていたという。


 それにしても、よく1人で器用に両手足をロープで縛れたものだ。


「階級は消防司令です。昨年4月から13人が所属する朝日分署の分署長を務め、署員を指揮・管理する立場で火災時は現場に行き、救急出勤することもあります。特に勤務態度には問題はありませんでした。消費者金融から借金? プライバシーに関することなのでお答えはできません。消防の技術をもってしても、両足は縛れても両手まではなかなか縛るのは難しいと思います」(西村山広域行政事務組合消防本部担当者)


 強盗被害に遭ったからといって借金がチャラになるわけでもなく、市民の生命を守る立場にありながら、なぜこんな人騒がせなことをやらかしたのか。


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