【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】


 篠井英介さん(俳優・67歳)


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 近々、上演される名作「欲望という名の電車」。その主演を務めるのは個性派としてドラマや映画、舞台で活躍する篠井英介さん。

根っからの無趣味人間というが、これからやってみたいことは何か、聞いた。
 お恥ずかしい話なのですが、僕は本当に無趣味人間なんです。車に乗らない、子供がいない、ゴルフもやらない、お酒も飲まない、スポーツ観戦もしない。趣味ではないけど、やることといえば電子たばこを吸うくらいですね(笑)。休みの日は何をしているのかというとお芝居や映画を見るか、本を読むくらい。読むのも演劇関係、役者さんの自叙伝、歌舞伎の芸談ものとか。そういう本を読んでいる時が一番楽しい。本当に面白みがない人間です。


■ごほうび食は焼き肉とすき焼き


 好きなことを強いてあげれば、食べることですね。それも豪華なものじゃなくていい。芝居の稽古が終わる頃になると、帰りに何を食べようかと考えるのが楽しみです。昨日はハンバーグを食べたから、今日はラーメンにしようかとか。

それだけで頭がいっぱいになる時があります。いつも刹那的です。


 食べ物ではお肉が好きですね。僕にとってのごほうび食です。焼き肉を食べることもあるし、すき焼きなら懇意にしている人形町の今半さんです。


 おそばは麻布十番にある永坂更科。そこの白い御膳そばが好きです。江戸前でそばつゆが濃くておいしい。行くと食べるのは天ぷら御膳そばです。


 東京ではお寿司にはあまり行きません。僕は金沢の出身。金沢は回転寿司でもおいしいので有名です。

江戸前の寿司は割と手間をかけ、仕事をしたものが多いですが、金沢のお寿司は素材自体がいいので、手をかけなくてもおいしい。それにやっぱりお米がいい。しかもリーズナブル。


■金沢生まれ、5歳から日本舞踊を習い、舞台に立つ快感を覚えた


 ですから、やりたいことを聞かれたらやっぱりお芝居になります。


 これまで見たお芝居で忘れられないのはテネシー・ウィリアムズの杉村春子さんが演じた「欲望という名の電車」、劇団四季がミュージカル劇団になる前に三田和代さん、北大路欣也さんが演じた、ジャン・ジロドゥの「オンディーヌ」、市村正親さんが演じた「エクウス」。中学生だった頃、劇団四季は年に2回、金沢に巡業に来ていたので、親に頼んで見に行きました。


 当時、演劇鑑賞会という団体が地元にあって、そこに入って、文学座、俳優座、劇団民芸、劇団雲や欅のお芝居も見ていました。岸田今日子さんのマクベス夫人、ゴッホを描いた滝沢修さんの「炎の人」や「セールスマンの死」も見ました。東京と違って芝居を見る機会は限られるので、欠かさず見に行きました。


 5歳の時から日本舞踊をやっていたので、舞台に立つ快感を覚えちゃったというか、慣れていたというか。その頃から将来は舞台に立つ人になりたいと思っていました。おかげさまで今、こうして夢をかなえられた人生でよかったと思います。


 そして、やりたいお芝居はやっぱり「欲望という名の電車」。杉村さんがやった主人公ブランチのイメージが頭の中に今も強烈に残っています。


 小学1年生で見たのはミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」。衝撃を受け大感動し、サントラ盤を買ってもらい、繰り返し聞きました。次にハマったのはオードリー・ヘプバーンの「マイ・フェア・レディ」で、好きになって浮かれまくりましたね。


 芸術の世界に陰陽があるとすれば、ミュージカルは陽の世界、「欲望という名の電車」は陰の世界です。人生には明るくて楽しい人生賛歌みたいなミュージカルも必要だし、一方で人間の暗部を描く「欲望──」のような作品も大事です。



■一番好きな「欲望という名の電車」がまたやれる。もう死んでもいい

 今度、私が一番好きな「欲望という名の電車」をやります。1992年にはジェンダー問題でかなわず、9年後の2001年にブランチを初演し、再演を03年、07年とこれまで3回やっています。正直言ってそれで終わりかなと思っていました。


 でも、おかげさまでその一番やりたいお芝居をまたやることができる。

今はもう死んでもいいと思っています(笑)。これを誰にも迷惑をかけず、無事にやり終えることができたら、大往生できそうです。


 歌舞伎は坂東玉三郎さんの影響を随分、受けています。歌舞伎を描いた映画「国宝」も見ました。よかったですね。


 あの映画はライバルの喜久雄と俊介の役に歌舞伎役者の縁者を起用しなかったことも成功の一因だと思います。もし歌舞伎役者の縁者だと「〇〇の息子がやっている」とわかって嘘っぽくなる。歌舞伎と縁のない2人がやったからこそ、みんなが見てくれる作品になったのではないでしょうか。


 もしテレビ版やネットフリックス版が制作されるなら「国宝」に出てみたいですね。女方としてなら、渡辺謙さんがやっていた父親の役なら大丈夫かもしれない。もしくは、とっても評判がよかった田中泯さんがやった女方です。存在感が抜群です。

本当に素晴らしかった。ああいう役をぜひやってみたいです。 (聞き手=峯田淳)



3月12~22日、東京芸術劇場の主演舞台

◆舞台「欲望という名の電車」(作/テネシー・ウィリアムズ)
 篠井英介、田中哲司、松岡依都美、坂本慶介ほか。3月12~22日、東京芸術劇場シアターイースト
 4月4、5日、大阪・近鉄アート館


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