【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#282


 藤本義一さん


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 直木賞作家、テレビ司会者、コメンテーター、脚本家、エッセイスト……テレビの深夜放送の草分け的番組「11PM」の火曜と木曜の大阪番の司会とたくさんの顔をお持ちの藤本義一さん。腰が低く、気さくで、話しやすく、聞いたことは柔らかな関西弁でなんでも答えてくださる、私にはスーパーマンのような存在でした。


 若手漫才師と作家志望をコラボさせる「笑の会」で、「近代漫才の父」秋田実先生の後、藤本さんが2代目代表をしていた時、作家志望としてお会いしたのが最初でした。それから数年後に番組のゲストで来ていただき「ああいう会は趣味で終わることが多いのに、ようプロになったね。世話役をやらせてもうてた甲斐があるわ」と喜んでくださり、「これからは仕事仲間やからよろしゅう頼みます」と握手で歓迎していただきました。


 一時期の関西発のドラマは藤本さんと花登筺さんが書いていたといわれるほどの超売れっ子で「週に10本ぐらいドラマや構成をやってたから、締め切りが重なるし、おんなじ原稿用紙見てたらわからんようになってくるんで、枠の色を赤とか青とかに全部変えて間違わんようにするとともに、色を見てその世界に没頭できるようにしてましたな」と語っていました。


■「呼ばれた時は、また1本構成番組が増えると思て、テレビ局へ行ったら」


 一世を風靡した「11PM」ですが、「呼ばれた時は、また1本構成番組が増えると思て、テレビ局へ行ったら台本見せられて、司会のセリフの名前に“藤本”て書いてるさかい『コイツどんなやつですのん?』て聞いたら『おまえやがな!』て言われて、初めて出演者やいうこと知りましてん」「でも脚本書くよりラクでよろしいわなぁ。台本通りにしゃべってたらええねんから」と言いますが、義一ワールドはそんなものではありません。


 人の意見を挟ませないほど早口で話す時もあれば「わかりまへんなぁ」とトボけて大爆笑をとるなど、場の空気を読み、独自の話をスッと入れたり緩急自在。ある時、「娘が国語のテストで『お父さんこれ答えなんやのん?』言うて、答案用紙持ってきましてん。“作者はこの時、どういう考えだったでしょう? A~Dの中から選びなさい”って私の本ですねん。問題の正解はAやねんけど、作者の私は解答欄の気持ちで書いてませんねん。テストなんかアテになりまへんで」と言われて「そんなことあんねや? 先生の許可とか確認はおまへんのん?」「ありまっかいな、そんなもん。テスト作る時に聞きにこいちゅうねん!」と面白おかしく問題提起をされたこともありました。


 阪神ファンの藤本さんは惜しくも優勝を逃したようなシーズンオフには「行くんちゃうか、行くんちゃうかとファンを熱狂させといて裏切る、これが阪神ですよ。関西の球団らしいやん。何十年に1回優勝するから喜びも格別なんで、しょっちゅう優勝してたらありがたみがないがな」と真顔でコメントし、楽屋では「あそこまで行って勝てんか……う~ん、まぁこれが阪神やな」と本気で悔しがっておられた。WBCでは阪神の佐藤選手が活躍していますが、今の強い阪神にどういうコメントされるのか聞いてみたいところです。


(本多正識/漫才作家)


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