【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 今週のトピックスはなんといっても、吉沢亮だろう。


 現在NHK朝ドラ「ばけばけ」に出演中。

小泉八雲・セツ夫妻をモデルとしたドラマで、吉沢は八雲の友人・錦織友一を演じている。


 舞台が熊本から松江に戻って再び吉沢の出番となった。前回の松江では咳をして血を吐いた姿が最後だった。そして今週の変貌したその姿に視聴者は呆然としたはず。激痩せしていた。目の輝きはなく、声にも覇気がない。誰がどう見ても病人なのがわかる。その姿に吉沢の役者魂を見た。


 映画「国宝」、そして「ばけばけ」。昨今の吉沢の仕事ぶりには目を見張るものがある。凄まじいほどの“覚悟”を感じるのだ。番組関係者が役作りで13キロ減量した……と書いていたが、いくら仕事とはいえ、わずか1カ月でそこまで痩せられるとは。

役の人生を背負おうとする姿勢には頭が下がる。「ばけばけ」のもうひとりの主役か。



■「天皇の料理番」で話題だった鈴木亮平

 それで思い出したのが鈴木亮平。2015年の「天皇の料理番」で佐藤健演じる主役の秋山篤蔵の兄・周太郎を演じた。結核を患い、病床にあってどんどん痩せていくさまには絶句。心配になるほどの激痩せは今も語り草だ。


 現在、「リブート」に主演しているが、全身整形などほどこさなくとも「セルフリブート」で別人になりきれるのではとさえ思えてくる。


 役者魂は何も肉体改造だけに限らない。今期ドラマ「テミスの不確かな法廷」で松山ケンイチが見せる芝居も驚嘆に値する。松山が演じているのはASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠陥多動性障害)の特性を抱えた裁判官。視線の泳がせ方から手の微妙な動きまで繊細に演じる愛されるキャラクターだ。


 かつては映画「楢山節考」で老女を演じるために前歯を抜いたという坂本スミ子や、映画「異母兄弟」に出演した際、30代半ばで老け役を演じるため、やはり歯を10本も抜いたという三国連太郎など「役者魂」を伝えるエピソードをよく聞いたものだ。


 それがいつの間にやらアイドルがドラマの主役を務め、周囲もちやほやするから役者という仕事が片手間でもできるもののように見えてしまう時代になった。


 だが、最近、吉沢や鈴木、松山のように役と真剣に向き合い、体も芝居もとことん使って人物を生きようとする俳優が存在感を増している。彼らが画面に現れるとドラマの空気が変わる。登場人物がただの「役」ではなく、そこに生きている人間に見えてくる。


 演じることと真剣に向き合う本物の俳優が現れ始めたことで、またテレビドラマが面白くなるのではないか。ドラマを面白くするのは企画でも話題性でもない。最後にものをいうのはやはり「役者魂」ではないのか。


(桧山珠美/コラムニスト)


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