ヒット作「オッペンハイマー」(2023年)で主演を務めたキリアン・マーフィーが、クレア・キーガンの原作小説に惚れ込んで映画化。アカデミー賞俳優はどんな物語を選んだのかな、と軽い気持ちで鑑賞したら、胸に染みる佳作だった。
舞台は1985年、アイルランドの小さな町。小規模な石炭販売を営むビル・ファーロング(キリアン・マーフィー)は、妻のアイリーン(アイリーン・ウォルシュ)と5人の娘たちとともにつましく暮らしていた。
クリスマスが近づくある日、石炭を届けに訪れた地元の修道院で驚くべき現実を目撃する。そこに身を置く少女に「ここから出して欲しい」と懇願され、若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実と向き合うことに。見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも、良心の呵責に悩むビル。そんな彼が最後に下す決断とは――。
日の差さない真冬の田舎町。風が容赦なく吹きつけ、裸足の少年が夜陰にまぎれて食べ物をあさっている。主人公のビルは寡黙で多くを語らない。妻のアイリーンは近づくクリスマスの費用に頭を悩ましている。
ビルは若い女性が修道院に無理やり収容される光景を目撃。未婚で妊娠した女性が送り込まれているという噂もある。気にはなるが、家族のために事を荒立ててはならないと判断し、行動に移さない。
だが石炭を納める小屋に女性が閉じ込められている光景を目撃したときから、このまま知らぬふりを続けていいのかとの思いを抱え、物語はダークな雰囲気で進んでいく。
貧しい町では修道院が支配力を発揮し、人々を沈黙させている。修道院とはいえ、その実態は刑務所さながら。女性たちは併設された洗濯所で働かされ、人権無視の環境下に置かれる。それでも町の人々は何も言えない。ビルも同じだ。妻と5人の娘の未来を考えると、貝のように押し黙るしかない。
人間社会のタブーと、人間精神の懊悩を垣間見る問題作
考えてみると、われわれが住む日本にも、特定の組織や集団が幅をきかせている町が存在する。企業城下町では「〇〇社の悪口を言ったら、ここに住めなくなる」などという言葉を聞く。
非情の巣窟ともいえる修道院はエミリー・ワトソン演じるメアリー院長が絶対的な力をふるっている。そのメアリーがビルを居室に招き、お茶をふるまうシーンは圧巻。言葉は穏やかだが、エミリー・ワトソンの演技が怖い。静けさの中で眼前の男を支配下に追い込んでいく。ベルリンの助演俳優賞を獲得するのも当然だ。筆者は「すごい女優がいるものだ。今の日本にこれほど威圧感に満ちた演技のできる女優がいるだろうか。いるとしたら高市早苗か?」としばし考えてしまった。
同時に、この状況下に自分がいたら、何ができるだろうかと思案した。キリアン・マーフィーはインタビューで「観客に『自分ならどうするか?』と問いかけたいですか?」と聞かれ、こう答えている。
「自然とそうなると思います。
セリフの少ない重厚な演出のうちに人間社会のタブーと、人間精神の懊悩を垣間見ることができる問題作。キリアン・マーフィーの言う通り、「問い直すための映画」なのだ。ちなみに原題は「Small things Like These」。「ほんのささやかなこと」という意味である。(TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開中/配給:アンプラグド)
(文=森田健司)

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