「ムー」といえば、「UFO」「超能力」などを扱うオカルト雑誌の老舗。ウェブ版およびその編集部も存在し、日々、世界の「謎と不思議」について情報を発信している。

“怪しげな情報の宝庫”のイメージもつきまとう「ムー」だが、その発信する情報は、世にいう「陰謀論」とは異なるそうだ。


 今回、インタビューに応じてくれたのは「webムー」の編集長を務める望月哲史氏。「不可思議な現象の証言や状況証拠を集め、客観的に紹介、考察していくのがムーのスタンス」だと明かす同氏は、情報発信をする上での絶対の条件があると説明する。


「『ポピュリズムに寄ってはならない』という不文律は、常に編集部内にありますね。特にウェブで情報発信をする以上、閲覧数の最大化は確かに最重要課題であり、そうであればセンセーショナルさを追求すればいいのですが、それを目指すには『○○は、実は○○だった!』という具合に結論を急いで断定せざるを得ない。結果、あおることが目的になってしまうんです」



何かと「断定」しがちなウェブの世界

 望月氏はYouTubeなどでよく目にする「断定調」の情報発信を「YouTubeしぐさとでも言えばいいのでは」と名付けつつ、これを警戒するよう説く。


 確かに、これらの情報発信では、近年ではそれこそ、「コロナは生物兵器だ!」「コロナワクチンを接種すると人間が5Gに接続してしまう!」といった極論の跋扈が目立ったが、望月氏はこれらの言説について、再生数の獲得を求めすぎたあまりサムネイルや動画タイトルが過激になる競争に陥っているのではないかと指摘する。


「そもそも、世の中には断定できる事実はそう多くありません。とりわけ、ムーで扱うようなテーマを断定したってしょうがないんです。意外かもしれませんが、普段から取り上げているUFOや超能力について、ムーは断定していません。『断定よりは説得力』という形で、あらゆる可能性を保留しているんです」



「扱いそうなのに扱っていないね」と何度も言われた「コロナ陰謀論」

 その結果として、ムーではコロナ陰謀論を取り上げることは、ついぞなかったという。


「この姿勢に対しては『いかにも扱いそうなのに扱っていないね』と何度も言われました。

あと、最近ですと『エプスタイン問題』ですね(笑)。どうやら、世間の方が抱くムーへのパブリックイメージと実際の内容には相当大きな隔たりがあるようです。ウェブ上の情報はどんな媒体が出していてもその情報は等価なうえ、その情報をさらにネットユーザーが編集してSNSで発信できてしまう状況ですから、情報の発信元としては常に他者の視点を内在化させ、内容に偏りが出ないよう細心の注意を払っています。なかなかバランスは難しいのですが」


 陰謀論とムーのスタンスの違いがひしひしと伝わってくるが、このスタンスの違いが扱うネタの違いに表れていると考えると実に興味深い。


(取材・文=坂下朋永/日刊ゲンダイ)


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