の「ARASHI Anniversary Tour 5×20FILM“Record of Memories”」(2021年公開)が興行収入50億6000万円の大ヒットとなったのが呼び水になって、最近は「ライブ映画」が次々公開されている。昨年はMrs.GREEN APPLEの10周年を記念したライブ映画が注目を集め、今年に入って福山雅治が自身で監督も務めたライブ映画の第2弾が2月に、3月にはチェッカーズの1988年の東京ドームコンサートを収録したライブ映画も登場した。


 同じく、ライブそのものの面白さが味わえる作品がある。現在公開中の「記録映画 今は昔、栄養映画館の旅」は、柄本明が座長を務める東京乾電池が14府県24カ所の映画館をめぐって行った公演のロードムービータイプのドキュメント。演目は竹内銃一郎・作の不条理朗読劇「今は昔、栄養映画館」で、出演者は柄本と劇団員の西本竜樹の2人。朗読劇では映画監督と助監督に扮した彼らが、映画の完成セレモニー会場で、来場者ゼロの状態を何とかしようと悪戦苦闘するさまが描かれる。しかも移動はたった1台のワゴン車で、記録映画のスタッフは監督の竹田正明のみ。昨年5月にひと月かけて上演したツアーの模様が、作品では描かれる。


■浮かび上がるさまざまな人間性


 移動中の柄本と劇団員のおしゃべりや、各映画館での観客の反応、観客と柄本との触れ合い、打ち上げの模様などが収められ、ライブに関わった人たちのさまざまな人間性が浮かび上がる。柄本は公演期間中に2度点滴を受けながら完走。76歳の俳優がライブ公演に臨むことで力を得ていくさまが心地よい。劇団員に語る「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」に出演した時のウィーンロケの話も面白いし、彼の素の顔が端々にのぞく。また柄本主演の「カンゾー先生」のパンフレットを持ってきてサインしてもらうディープなファンや、東京乾電池にかつて在籍していた元劇団員たちも顔を見せ、観客側の人生模様も映し出されていく。会場の映画館は単館の個人経営映画館ばかりで館主たちにもドラマがある。


 日本映画は元々、芝居小屋の出し物の代わりに上映する見せ物のひとつとして大衆に受け入れられた。そんな原点に返ったような、娯楽メディアとしての臨場感、見る者を巻き込む高揚感が気持ちよく味わえる作品だ。


 東京では、新文芸坐やシネマヴェーラ渋谷などで、今回の映画上映に合わせた朗読劇「今は昔、栄養映画館」付きイベントも行われたが、4月には早稲田松竹で朗読劇と上映を予定。ライブ自体の魅力を表現した映画として、この作品は一見に値する。ライブとはこれほど楽しいものなのだということを体感できる異色の記録映画だ。


(金澤誠/映画ライター)


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