【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#20
特別編「ビートルズとローリング・ストーンズ」①
◇ ◇ ◇
ビートルズとローリング・ストーンズ。言うまでもなくロック史を代表する2大バンドである。
『アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン』(1963年)の項に書いたように、ストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズは、ジョンとポールに触発され、曲作りを始める。
その後のストーンズは、アルバム『サタニック・マジェスティーズ』(67年)など、ビートルズの影響を隠しきれない時代もあったが、翌68年の『ベガーズ・バンケット』(試聴リンク参照)以降、ビートルズとは違う持ち味を生かし、超長寿バンドとして君臨しているのはご存じの通り。【オリジナル記事で試聴する】
さて、私などは、物心付いた頃からビートルズとストーンズを「ロック史を代表する2大バンド」として刷り込まれ、彼らを聴かないと話にならないと教えられた。
そういうムードに反発したこともあったが、聴き込んでいるうちに、ビートルズとストーンズの別格性が何となく分かってきたのである。
まず初期、60年代前半に関していえば、白人にもかかわらず、黒人音楽のエッセンスを積極的に取り込んでいたこと。
白人と黒人の音楽文化がパキッと分かれていたアメリカに対して、大西洋を越えたイギリスでは、もう少しニュートラルに捉えることができたようだ。
結果、黒人音楽を白人的、イギリス的に加工した、新しい音楽が生まれ、世界中の若者をとりこにしたのである。
だが、そういう音楽性の面以上に、私が着目するのは「インフラ」の話だ。ロック音楽に追い風が吹く60年代の時代環境をもっとも満喫・謳歌したのが、彼らだったと考えるのだ。
まずはオーディエンスの人口が多い。第2次大戦後に生まれたベビーブーマーは、特に欧米で爆発的な人口になっていた。
加えて、楽器や録音など、機材面でのイノベーションが激しい時代でもあった。
さらにはテレビジョンや映画、レコードのインフラも広がり、この東アジアの敗戦国でもビートルズを楽しむことができることになった。
要するに50年代以前、70年代以降と比べて、ロック音楽に対して、時代環境的に猛烈な追い風が吹いた。その風を、他のどのバンドよりも全身に受けながら、ビートルズとストーンズが君臨したのである。
追い風を満喫・謳歌しながら、ジョンとポールが、そして「ジョンとポール」と「ミックとキース」が切磋琢磨している。鬼に金棒、かぶと虫に転がる石なのだ。
▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。早大政治経済学部卒業後、博報堂に入社。在職中から音楽評論家として活動し、10冊超の著作を発表。2021年、55歳になったのを機に同社を早期退職。主な著書に「中森明菜の音楽1982-1991」「〈きゅんメロ〉の法則」「サブカルサラリーマンになろう」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。

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