【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#1
今年は2026年。では、今からちょうど10年前、テレビは何を映していたのか。
「10年ひと昔」とはよく言ったもので、遠すぎず、近すぎずだが、確実に“別の時代”になっている。しかも懐かしさだけでなく、現在へとつながる要素も満載だ。初回は、「背景」という意味で16年春のテレビ状況を振り返ってみたい。
■高市総務大臣(当時)が「電波停止」に言及
この年の2月、衆院予算委員会で高市早苗総務大臣(当時)が、政治的に公平性を欠くと判断した場合の「電波停止」に言及した。確かに総務大臣は停波の権限をもつ。しかし放送の政治的公平をめぐる議論の場で、その「権限の行使」を強調したこと自体、放送局に対する立派な恫喝であり一種の圧力だった。
放送法第4条の「政治的公平」の原則が政治の介入を防ぐための規定であることを踏まえ、政権のメディアに対する姿勢があらためて問われた。しかも現在に至るまで、高市自身がこの発言を撤回していないことを忘れるべきではないだろう。
3月になると、「クローズアップ現代」(NHK)の国谷裕子キャスター(顔写真・中)、「NEWS23」(TBS系)の岸井成格アンカー(同・左)、そして「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスター(同・右)の3人が降板した。いずれも毀誉褒貶はあったものの、特定秘密保護法、安全保障関連法といった「この国のかたち」を変えようとする政治の流れの危うさを、テレビを通じて伝え続けたことは事実だ。
国谷は最後の放送でこう語った。
「国内、海外の変化の底に流れるものや、静かに吹き始めている風をとらえようと日々もがき、複雑化し見えにくくなっている現代に、少しでも迫ることができれば、との思いで番組に携わってきました」
見えないところで何が起きているのか。そこにどんな意味があるのか。もしかしたら国や国民の将来に大きく影響するかもしれない事象の深層を伝えることは、ジャーナリズムとしてのメディアの大事な役割だ。
こうした「もの言うキャスター」が時を同じくして画面から消えたことは、当時の安倍晋三政権が目指したメディアコントロールの“成果”でもある。実際に各局の報道番組はマイルドになり、この年の秋に行われた南スーダンへの自衛隊「駆けつけ警護」などについても、本質に迫る報道が行われたとは言えない。
彼らを失った後のテレビが何をどう伝え、また何を伝えてこなかったか。10年が過ぎた今、社会の現状と一様に“つるんとした”報道番組を眺めるとよくわかる。やはり10年は侮れない。あの“停波大臣”が、いつの間にか総理大臣になってしまうのだから。
(碓井広義/メディア文化評論家)

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