検察は「勝ち目」があると思っているのか。


 2018年5月、「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の野崎幸助さん(当時77)が急性覚醒剤中毒で死亡。

大阪高検は6日、殺人罪などに問われた元妻の須藤早貴被告(30)に対し、1審に続いて無罪とした大阪高裁判決について、「内容を不服」として最高裁に上告した。


 先月の高裁判決は<元妻が野崎さんの死亡により、多額の遺産を相続できるなど、殺害の動機になり得る事情はあった>とした上で、<元妻が野崎さんに不信感、違和感を持たれることなく致死量を超える覚醒剤を摂取させることは容易ではない>と指摘した。


 元妻の関与を直接的に裏付ける証拠はなく、高裁は<犯人と強く疑わせる事情はあるものの、間違いなく犯人であることの証明がない>とした1審の判断は<論理論、経験則に照らして不合理で許容できないものではない>と検察側の控訴を棄却した。


 検察は「何らかの方法で覚醒剤を摂取させた」と繰り返し主張し続けてきたが、覚醒剤を食事や飲み物に混ぜても強烈な苦みで吐き出してしまうほど。カプセルを使う方法も考えられるが、では「元妻がどうやって飲ませたのか」といった具体的な方法は明らかにされず、「野崎さんが自ら覚醒剤を飲んでいない」こと、あるいは「元妻以外に飲ませた人物がいない」ことを証明できないまま、1審の裁判員裁判で無罪を言い渡された。


■あえて最高裁に判断求める


 検察側は25年12月の控訴審初公判で新たな証拠調べや証人尋問を請求したが、高裁に退けられ、3人の裁判官による上級審でも判決は覆らなかった。それでも上告したのは勝算があるからなのか、それとも無罪判決を認めたくないのか。


 弁護士の山口宏氏は「判決は著しく正義に反すると最高裁が判断すれば、高裁に差し戻すことになりますが」と、こう続ける。


「袴田事件を含め、世間の耳目を集めた再審で無罪判決が下され、検察の威信が揺らぐ中、上告には消極的な姿勢のはずです。しかも逮捕から約5年が経過し、1審、2審で証拠不足が指摘されながら、何ら補充もできていません。これまで揃えた証拠で有罪にできると考えているのでしょうが、特定の証拠に基づいてある事実を推測する、推論の仕方です。彼らがいうところの正義を追求するため、あえて最高裁に判断を求めるということなのでしょう」


 検察側は1審判決について、「動機や計画性を推認できる間接証拠を個別的、分断的に評価している。

偶然が重なることはあり得ず、総合的に判断するべきだ」としていた。


「事件が明らかになってから、メディアもワイドショーの一部コメンテーターも元妻を犯人のように扱い、警察は何をやっているんだ、このまま放置しておくのかと批判が集まった。検察側も無理をして裁判を始めたのはいいが、この体たらくでしょう。これでは終え方が非常に難しい。何だったんだという批判が起こりかねませんから。最後まで一生懸命やりました、やることはやりました、それでもまだ戦う姿勢は取ってますよ、ということでしょう。そもそも今回の判決は『自殺である可能性を払拭できなかった』という判断です。野崎さんが殺されたかどうかは分かりませんし、『真犯人』が別にいるわけではありません」(前出の山口氏)


 やはり、「メンツ」を保ちたいだけなのか。


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