全国学力テストの正答率や東京大学合格者数で毎年上位にランクインする北陸三県。大都市圏から離れた地方で、なぜこのような実績が出るのか。

つねづね疑問に感じている人は多いでしょう。今回は、頭のいい子供を育む北陸三県の“秘密”に迫ってみました。

北陸の子どもハンパないって! 公立校から「東大合格者量産」の深いワケ

■ほぼ公立校だけで上位に食い込む

まずは今年のデータの確認から。2018年の全国学力テスト正答率は石川県が1位で66.8%。福井県が3位、富山県が4位と続いています。14年から18年にいたる5年間の東大合格者数平均値は富山県が6位で石川県が7位、福井県が23位となっています。

上位は東京都や奈良県、神奈川県など有名私立進学校があるところばかりで、「ほぼ公立校だけで上位に食い込んでいる」のが北陸三県の特徴です。

北陸の子どもハンパないって! 公立校から「東大合格者量産」の深いワケ
学力テスト正答率
北陸の子どもハンパないって! 公立校から「東大合格者量産」の深いワケ
東京大学合格者数

次に北陸三県の子どもたちの特徴を見てみましょう。学力テスト同様に上位を占めているのが小学生新聞購読率で、1位は福井県の57.0%。富山県が2位、石川県が4位。北陸三県の子どもたちは新聞好きです。

図書館利用率も高く、福井県が1位、石川県が4位、富山県が7位となっています。

日頃から活字に親しんでいることが高い学力につながっているようです。

■北陸の家庭はかなり“裕福”

生活習慣を見ると、小学生の地域行事参加率は福井県が3位、富山県が7位、石川県が10位といずれも高く、小学生の朝食摂取率も富山が9位、福井が14位、石川県が20位。規則正しい生活を送り、地域社会に見守られた礼儀正しい小学生の姿が目に浮かびます。

続いて子どもたちの家庭環境を見てみましょう。父子・母子家庭数は富山県が全国で最も少なく、子育て世帯100世帯あたり5.10世帯。これに続くのが福井県で5.15世帯。石川県も5.59世帯で下から10番目と少なめです。

子育て世帯年収は福井県が東京都に続く2位で787.3万円。富山県が5位で746.6万円、石川県が6位で743.9万円。

世帯年収が高い分、子育て世帯の相対的貧困率が低く、富山県が全国で最も低い7.09%、これに続いて低いのが石川県で7.22%、福井県も7.48%で4番目に低くなっています。もちろん学校給食費滞納率も低く、富山県が0.255%で全国最低、福井県も石川県も下から10県に入っていて、北陸三県の子どもたちは金銭的に豊かな環境で育っているようです。

■「正社員共働き」が北陸流

なんだ、北陸三県はお金持ちなのかと思えますが、サラリーマン年収を見ると上位は大都市圏で北陸三県はほぼ全国平均並み。

たくさん給料をもらっているわけではなさそう。

そこで注目されるのが共働き率と正社員数です。共働き率は福井県が全国2位の70.50%、富山県が4位で69.08%、石川県が7位で67.88%と両親が共に働くのが北陸流。

人口に占める正社員の数を比較した正社員数も福井県が2位、富山県が3位、石川県が5位と高く、両親が安定した職場で働くことが北陸三県の子育て家庭の豊かさにつながっているようです。

さらに職場を調べてみると第二次産業従業者数は富山県が1位で生産年齢人口1000人あたり276.52人。福井県が3位、石川県が13位となっており、第二次産業で働く人が多いのも北陸三県の特徴です。

これらをまとめると、北陸の子どもたちは

●安定した第二次産業で正社員として働く両親

●共働きによる豊かな家計

●子どもたちを見守る地域社会

といった環境の中で育ちます。本好きで真面目な性格や学力の高さはこうした環境によるものと言えそうです。

【著者プロフィール】

統計ジャーナリスト 久保哲朗

統計ジャーナリスト。1970年、佐賀県生まれ。東京大学文学部卒業。長野県伊那市でシステムエンジニアとして働くかたわら、さまざまな統計データを収集・分析。

「都道府県別統計とランキングで見る県民性」など、統計データを駆使したWebサイトを複数運営している。著書に『47都道府県の偏差値 』(小学館)など。

都道府県別統計とランキングで見る県民性:http://todo-ran.com/

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