深海に棲息する謎めいた生物の死骸と思われる巨大な肉塊が、世界各地の海岸に打ち上げられる。1960年代初頭、アメリカの動物学者で隠棲動物学の権威、故アイバン・T・サンダーソンは、この肉塊を「グロブスター」と名づけた。

2018年8月、そのグロブスターが、ロシア極東のカムチャツカ半島のベーリング海の海岸に漂着した!!
「シベリアン・タイムズ」(2018年8月15日付)が報じるところでは、現場はパハチ村の海岸。発見者は、近くに住むスヴェトラーナ・ダヤデンコさん。嵐が過ぎ去った翌日。彼女は海岸付近を散歩中、強烈な悪臭を放つ得体の知れない物体を目の当たりにしたという。
メディアの取材を受けた彼女は、「私が興味深いと思ったのは、全身が無気味な毛で覆われていることです。毛皮のように見えますが、1本1本がチューブ状になっていて、まるで無数の小さなパイプが生えているようです。古生物なのでしょうか? 本当に奇妙な生物です」と語っている。
体の一部が砂に埋もれているので、掘削機などの重機がなければ全容を知ることはできないという。出ている部分だけでも全長約8メートル、重さは約4トン以上と推定された。
シワのようになった櫂かい状のヒレと体毛に覆われた体形からして、これは典型的なグログスターである。とはいえ、従来のグロブスターには見られない特徴がふたつある。
ひとつが全身を覆っている繊維状の体毛だ。ダヤデンコさんが指摘するように、その1本1本の毛が中空でチューブ状になっている点である。ふたつ目は、体のから伸びた尾とも頭部ともつかない長い部分だ。これらは新発見であり、新たな謎としてUMAが高いと主張する。つまり、毛皮のように見える部分は、腐敗した筋肉繊維だと指摘し、「海中にはさまざまな種類の生物がいて、中でもクジラには、奇妙な見た目の種類がいます。おそらくクジラの遺骸の一部でしょう」と結論づけている。

確かにコルネフが指摘するように、グロブスターの正体は腐敗したクジラの遺骸から放出された皮下脂肪の塊ではないか、という他の生物学者の意見もある。しかし、今回見つかったグロブスターにそれは当てはまらない。なぜなら筋肉繊維ではなく、チューブ状の毛で覆われているからだ。皮下脂肪の塊に、チューブ状の体毛など生えているはずがないのだ。
それよりも、このチューブ状の体毛といい、尾とも頭ともつかない部位といい、今回漂着したグロブスターは、〝新種〟といってもいい特徴を備えている。はたして、死骸からサンプルが採取され、DNA分析がなされたのかどうか、その後の続報を待ちたい。
(「ムー」2018年11月号より抜粋)
文=並木伸一郎
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