今やセレクトショップの激戦区となった中目黒。そこにおよそ20年間お店を構える老舗「HOSU」。
そんな「HOSU」が、アウトドアブランド〈Foxfire〉とコラボ。「なにやら凄いものが出来た」との一報を受け、その真相を確かめるべく、HOSUの顔、札場さんに事情を聞いてきた。

札場 武蔵(ショップマネージャー)
1983年、目黒区生まれ。2015年から中目黒の老舗『HOSU』に勤務
〈Foxfire〉って何者?
—〈Foxfire〉の名前を聞くのが初めてでして、そもそもどんなブランドなのでしょうか?
〈Foxfire〉は、ヨーロッパから釣具を仕入れる「Tiemco」という会社が1982年にスタートした、日本のブランドです。メインで手がけているのはフライフィッシング用のウェアで、日本初のアウトドアブランドと言われています。ちなみに、フィッシングベストは日本で最初にここが作っているんです。
—そうなんですね!
服好きにはあまり知られてないのですが、釣りをやっている人にはよく知られていますね。あと、カメラマンが身につけるベストもここのものがベースです。まだ世界での展開はしていないのですが、極寒地で写真を撮っている写真家からはすでに世界的に支持されているんです。

—となると、やっぱり造りから他と違うのでしょうか?
フィッシングベストの構造一つとっても、重みが分散して身体の負荷を軽減するように計算されています。あと、ほかのブランドとの違いといえば、フィールドテストをしっかり行っていること。
—実際に現場で使って効果を確かめている、というのは確かに信頼できますね。
そうですね。自社で開発しているものも多いんですよ。例えば、ゴアテックスってあるじゃないですか。

—マウンテンパーカーなんかによく使われているあれですよね?
そうです。ゴアテックスを企画から作ってメインで取り扱えるのって、日本では3社しかなくて、その一つがココなんです。

Foxfireのロゴ。自然という教師が人間に与え続けている知恵の象徴として、枯れ木に生える菌や虫が発する光(フォックスファイヤー)をモチーフにしている。
老舗コラボの裏側

—今回のコラボのきっかけは何だったのでしょうか?
〈Foxfire〉って実は直営店が全国に40店舗くらいあるんですよ。さらに釣具屋にも卸しているんですけど、アパレルは一切やったことがないんですね。
—販路を広げるにあたって、なぜHOSUさんが選ばれたのでしょうか?
〈Foxfire〉さんとしては、「日本のブランドで、歴史があるところ」が大前提だと。うちも間もなく20年目を迎えますし、ずっとものづくりにはこだわっている。そういった背景を見ていただいて、ぜひ一緒にやろうということで紹介していただきました。あと、うちの代表はスポーツウェアにもよく携わっていまして。「歴史」と代表のスポーツウェアに対する「企画力」の二つが大きな理由だと思いますね。

—実際コラボするにあたって、意識した部分はありますか?
今回のコラボではダウンジャケットやマウンテンパーカー、ストレッチの入ったトラウザーを中心に展開していますが、〈Foxfire〉さんの土俵ではやらないようにしています。一緒に並ぶと「こっちの方がかっこいい」とか、「こっちの方が便利」ということが起こりかねないですからね。なので、今回のコラボ商品は〈Foxfire〉さんの直営店では並ばないですし、逆にPOP UPイベントなどがない限り、基本的にはうちに〈Foxfire〉さんのオリジナルアイテムが並ぶことはありません。“競争よりも共存”を意識しました。

左胸には〈Foxfire〉の、左腕部分にはHOSUのロゴが配され、コラボを象徴している。
—お互いの強みを活かすために、コラボアイテムはどのようにデザインされているんですか?
お互いの意見を出し合って、うまくその間をとることですね。


技術が詰まった、至極のダウンジャケット
互いの技術と技術がぶつかり合うHOSUと〈Foxfire〉のコラボ。その中から、札場さんが今季一押しというダウンジャケットを紹介してもらった。

HOSU×Foxfire – 3WAY GORE-TEX JACKET
まず、値段が約14万円なんです。でも、その機能に納得してくださったお客様は、若い方でも即決してくれる。うちでは「自分がどんなものを着ているかというのを理解したほうがいい」と考えて、積極的に商品の説明をしているんです。そういう背景もあるから、うちのお客さんにはこのダウンジャケットに興味を持って、「それなら、それだけの値段はしますね」と納得していただけるんだと思います。
あと、アウトドアウェアは基本的に機能をウリにしていることが多いのですが、いざ「何がいいの?」と聞かれると答えられる部分が少なかったりして。でも、これは圧倒的に話せることが多いんですよ。
—お値段のハードルは高いけど、それだけの魅力があるってことですね。その魅力、教えてください!

まずは表地。ゴアテックス素材なんですが、その中でも「パックライト」という軽量に特化したものを使っていて。

あと、内側に薄手のダウンを装着できるんですよ。取れば春もマウンテンパーカー感覚で着られて、ダウン単体でも着られる3WAYです。
ダウンは高品質と呼べる基準を満たした700フィルパワー(※1)のものを使っています。このダウンもすごいんですよ。使われているのは超撥水のフレンチダックダウン。ダウンやアウターは表面に撥水加工をしていることが多いのですが、これはダウンの羽自体にも撥水加工を施しているんです。つまり、普通ダウンは汗や湿気でくたってしまうのですが、それが起きにくい。

(まだまだとまりません。)

そして、ダウンを包んでいる生地もすごい。「ピスティルファイバー」という加工を表面に施して、ミクロ単位で中綿が出にくいように設計しているんです。着ている途中で羽毛が出てきてしまう、なんてこともありません。
人によっては喜んでもらえると思うんですけど、ダウンを取り外したら、それ自体に付属しているポケットに収納して持ち運べるんですよ。旅先が極寒地だった場合は、表側だけを着ていって、旅先でダウンを合体させる事もできる。

これの何がすごいって、小さく畳むには通気性が良くないといけないのに、さっきの「ピスティルファイバー」は通気性も確保しているんですよ。通気性がいいのに、羽毛が出てこない。一見矛盾しているような機能を両立しているんですね。
(※1)羽毛のかさを表す単位。高いほど軽く、暖かい。
—表地とダウンの話だけでも、想像以上の技術が詰まっているのがわかりました。ほかにもまだまだこだわりが?

まだあります。フードについているファーはチャイニーズラクーン(※2)のものを使っています。フェイクファーを使えば価格を抑えることができるのですが、これを使う意味もちゃんとあります。というのも、氷点下だとフェイクファーって凍るんですよ。
この話って、大抵の人には「ああ、そうなんですね」で終わってしまうんですけど、フードを被った時にファーが凍っていると、氷が全部顔についてしまうんです。だから北海道に住まれている顧客さんには本当に喜ばれていて。
(※2) 毛皮の原料としてはポピュラーな、中国に生息するたぬきの一種。
—リアルファーのふんわりした毛並みは見た目の高級感にも貢献しているように見えますね。デザイン的な魅力はなんでしょうか?
やっぱり腕まわりですね。綺麗なラインに見えるように、かなりこだわっています。腕まわりの印象ってけっこう大きいんですよ。あと、このダウンは〈Foxfire〉さんのアイテムをベースにしていて、コラボということでHOSUオリジナルの仕様に変更されています。

—では最後に、このダウンジャケット、どう着こなすのがおすすめでしょうか?
「何でも合う」がウリなんですよ(笑)。ファーを取ればスーツに合わせて着られますし、ジャージと合わせたりしてカジュアルにもいける。相当振り幅が広くて、それも買ってもらえる理由の一つですね。

ダウンジャケットを札場さんがコーディネート。シャツとスラックスに合わせて、クラシカルにタイドアップ。ボーラーハットやダブルブリッジの眼鏡といった遊び心あるアイテムと合わせて、HOSUらしく着こなしてくれた。

HOSU

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