80年代後半から90年代に北米で発売された日本車はその当時から若者たちに人気があった。日本がRV(現在のSUV)ブームに沸いていた頃、とくにアメリカ西海岸周辺ではホンダ・シビック、トヨタ・スープラ、日産 240SX、三菱エクリプスなどのスポコン車が大人気を博していた。

また、90年代半ばから2000年代初頭にかけてTEIN、TAKATA、トラスト(GReddy)など日本の著名なアフターパーツメーカーがアメリカに進出したことで、日本車のカスタム、チューニングを楽しむ若者が爆発的に増えてきたという背景もある。やがて、それらのチューニングスタイルや日本仕様の車をJDM(Japanese Domestic Market)と呼ぶようになり、近年は日本車そのものから、日本独特の車検制度や車庫証明ステッカー、日本のナンバー、痛車や暴走族、VIPカーなど、他の国にはない日本車独特のカスタムスタイルまでが「JDM」と呼ばれるようになっている。
■右ハンドルの日本車は、北米では「神」的存在

JDMに熱狂する若者たちにとって、最高にクールなのが、本物の日本仕様車=右ハンドル車なのである。昨年秋、SEMAショウの取材でアメリカを訪れた際、日本車をカスタムして乗っている若者たち数名に話を聞くことができた。JDMフリークにとって目指すべき至高の存在、カリスマともいえるのがアメリカでは「右ハンドルの日本車」なのだという。確かに右ハンドルの日本車こそ、究極のJDMと言えるものだ。しかし、北米では自動車メーカーがテスト走行用に輸入・登録するような特例を除いては右ハンドル車の登録は不可能だ。
ではどうやって、右ハンドル日本車を入手するのかというと……。実は北米には古い車に対する特別なルールが存在する。
■R32 スカイラインGT-Rの価格高騰の一因にも

近年、R32スカイラインの中古車価格が高騰しているという話を聞いたことがあるという人もいるだろう。R32以外にも、90年代前半に製造された80スープラやスポコン系の日本車、R33、R34の値段も高騰しつつある。これぞまさに25年ルールの影響である。2014 年にはR32 スカイラインGT-R(1989年~)、2018年にはA80系スープラ(1993年~)が解禁となり、2019年には以下の車がルール適用となる。多くのJDMフリークが解禁を心待ちにしていることは言うまでもない。
三菱ランサーエボリューションII
三菱FTO
日産シルビアニスモ270R
日産スカイラインGT-R V-Spec II
スバル・インプレッサWRX STI
トヨタ・セリカGT-Four
などなど。
■日本車のどこが評価されているのか?

私たち日本人は、日本車が海外で高く評価されている理由を、「品質がいい」「故障が少ない」「燃費がいい」「ディーラーの対応がいい」「修理の部品が早く届く」などと想像するだろう。
「JDMのカスタムスタイルはとても個性的。他の国の車にはないアイデンティティがある。だから大好き!」
「チューニングやカスタムをする際のパーツの豊富さ、選択肢の多さが素晴らしい。車高調一つとっても、単に車高を下げるだけのものではない。車高を下げても性能や乗り心地をスポイルするものではないし、非常に細かい調整ができる。運転しながら車内で調整できるものもある。そして対応していない車種はない、というくらい幅広い」
「ボディキット(エアロパーツ)が日本らしくてカッコいい。ちょっと高いからなかなか手が出ないけど。ロケットバニー、リバティウォーク、ヴェイルサイド…どうしたらあんなにカッコいいボディキットが作れるんだろう」
カスタム&チューニングの世界でも日本車、日本ブランドのパーツがここまで高評価だったとは!少々意外。でもなんだか誇らしい気もする。先週終了した2019年の東京オートサロンにも海外からの来場者が昨年にも増して多かった印象だ。
【著者プロフィール】
自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子
山口県生まれ 学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。一般誌、女性誌、ウェブ媒体、育児雑誌などへの寄稿のほか、テレビやラジオの情報番組などにも出演多数。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。愛車は新車から19年&24万キロ超乗っているアルファスパイダー。