プロに聞く、キャップの被り方
突然ですが、キャップを被っている日に、ふと自分の姿を見て「全然似合っていない」って凹むことありませんか?考えてみれば、被るなら浅めと深めどっちがいいのかも、よく知らなかったり。
「カッコよくキャップを被れるようになりたい!」
そんな思いを胸にやってきたのは、高円寺のセレクトショップ「Lampa」。
オーナーの遠山さんに、キャップにまつわるお話をアレコレ聞いてきました。
(聞き手=フリーライター山梨)
\教えてくれるのは、この人!/
遠山 勇(とおやま いさむ)
1973年生まれ。高円寺のセレクトショップ「Lampa」のオーナー。大のキャップ好きで種々様々なタイプのキャップを被ってきた猛者。ストリートスタイルとヒップホップに造詣が深く、セレクトするアイテムは初心者・玄人問わず好評を得ている。写真では坊主だけど昔はロン毛。その理由は後ほど!
ファッションのプロはいつキャップを被りはじめたか?
山梨 遠山さんは取材のたびにいろいろなタイプのキャップを被っていますよね。そもそも遠山さんがキャップを被りはじめたのはいつからでしょうか? 遠山さん ちゃんとファッションアイテムとして被ったのは高校生の頃かな。ヒップホップ経由でブラックカルチャーにどハマりしてから、
黒人のコーディネートも真似するようになって。それからベースボールキャップを買いましたね。
遠山さんの私物。2000年代のストリートシーンを代表するブランド〈EXPANSION〉のベースボールキャップ
山梨 黒人のスタイルのどこが魅力的だったのでしょう? 遠山さん
キャップを後ろに被るのがめちゃくちゃサマになっていたんですよ。今までキャプテン翼の若林くんでしか見たことない被り方だったのに、急にかっこよく思えてきて。
山梨 天才キーパーから一瞬でギャングスターのイメージに(笑)。
遠山さん そうそう(笑)。あと、当時はベースボールキャップとかゴツいアクセサリーとか、特定のアイテムを身につけることが「僕はこんなカルチャーが好き」というアピールになったんです。
「ニューエラのシールは剥がしていた」
山梨 キャップはどこのブランドのものを被っていましたか? 遠山さん
やっぱりニューエラは買いましたね。ただ、ツバは曲げていたし、シールも剥がしていた。
山梨 それは意外です! ヒップホップファンはみんなニューエラのシールにこだわるのかと。 遠山さん あれって、もともとは
「ホンモノを盗んできた」とアピールするために剝がさなかったんですよね。その流れで服もタグをつけたまま着ている人がいて。でも、真似するのはいやだった。アメリカのヒップホップシーンにもかっこいいやつとダサいやつがいる中で、後者を真似している気がしたんです。
山梨 「ニューエラにシール」は安直に思えたと。 遠山さん そう。
地域とか所属する集団にも差はあったとは思うけど、自分の知り合いにもそういう人はいなかった。
あっちの文化をなんでも真似ればいいってわけじゃないんです。
「キャップの悩み」、プロはこう乗り越えました
山梨 遠山さん自身のキャップの攻略法も聞きたいなと。買った後や売り場で
「このキャップ、被り方わからないな」って思った瞬間はありますか? 遠山さん ない! わからないって思ったことがないです。
山梨 (…!) そ、そう考えるのはなぜ? 遠山さん 街なかで見つけた
おしゃれな人を被り方のお手本にしていたから、迷いがなかったんです。
今回は、遠山さんが挑戦したキャップをいくつか持ってきてもらいました。
「似合わなくてもあきらめない」
山梨 とはいえ「あの人には似合っても、自分には似合わないな」みたいなものもありますよね。 遠山さん そういうときは、なんとかできないか模索しますね。
山梨 具体的に言うと? 遠山さん いろいろ試したんですが、帽子の持っている雰囲気や色に服の方を寄せるとうまくいく、という結論に達しましたね。あともう一つやり方があって、最近被り方で悩んだのがこのキャップなんですけど……。
素人には手が出せない形のキャップ。「無駄にリバーシブルなんです」(遠山さん)
キャップ成功の鍵はカギは
“試行錯誤”と“髪型”にあり
山梨 なかなか見ない形ですね。 遠山さん 僕は比較的顔が大きい方なんですが、つばの幅が狭いものを被ると顔の大きさが強調されちゃうんです。
「どうしたもんかな?」と思って、試しに
つばを上に折ってみたら、しっくりきました。
これを……、
こうすればいい!
山梨 コーディネートを帽子に寄せたり、被り方を試行錯誤するのが遠山さんの対処法なのですね! 先ほど顔の大きさのことをおっしゃっていましたけど、逆にキャップが似合う人ってどんな人だと思いますか? 遠山さん これはキャップだけでなく被り物全般にいえるけど、
顔が小さい人と、
髪が長い人ですね。
山梨 顔が小さいと似合いやすいというのはなんとなく分かりますが、髪が長い方がいいのは意外です。 遠山さん 帽子のデザインがシンプルでも、頭の横から髪がちょっと出るだけでアクセントになるんですよ。だから僕も昔はNWA(※)のEAZY EやICE CUBEに憧れて、髪の毛を伸ばしてパーマをかけていましたね。
山梨 キャップが似合いやすい髪型にしていたんですね。 遠山さん そうですね。まあ、髪が短くなった今でもキャップは重宝していますよ。ある程度年をとると服で冒険しようとはならないとは思うけど、帽子なら攻めた色でも挑戦しようってなるじゃないですか。
山梨 確かにキャップなら色が派手でもハードルは低いですね! 遠山さん 今、真っ赤なポロシャツを着ている僕が言うのもアレだけど(笑)。
※NWA:ギャングスタラップの草分け的存在となった、カリフォルニア出身のヒップホップグループ。反社会的でアブないリリックが特徴で、代表曲「ファック・ザ・ポリス」はFBIから勧告を受けたほど。
その活躍ぶりは2015年の映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』に詳しい。
プロに聞く、
キャップの被り方の「アリ・ナシ」
コーディネートをキャップに合わせたり、キャップ自身を自分のスタイルに寄せたりと、いろいろなやり方でキャップを攻略している遠山さん。ここからは、そんな上級者・遠山さんにキャップにまつわるお悩みを解決してもらいます。
キャップを被るなら、「深め or 浅め」どっち?
山梨 まずは被るときの
「深さ」問題。一番多くの人がぶちあたる壁だと思うのですが、どれくらいがベストでしょうか? 遠山さん 深く被れば「真面目」、浅く被ると「ラフ」な印象になりますね。ベストなのはその中間くらいかな。イメージとしてはジーパンの穿き方です。浅く被るほど、「腰パン」みたいなハズしの効いたスタイルになると思ってもらえれば。
山梨 「今日はパーカーやTシャツでラフに行こう」という日なら、いつもより浅めに被るような感じでしょうか?
「この深さがベスト!」
「これは深すぎかな?(笑)」
遠山さん そうそう。あとは、自分のことをどう見られたいかです。お客さんがラフな格好をしていたら浅く被るのを勧めますし、「チャラく見られたくない」と言うなら深めに被るのを勧める。そういう意味では、大人になったら深く被っておく方が無難だと思います。
「衿つきの服を着るときは、こんなふうにあえて浅めに被ってもいいバランスになりますよ」
Point1.大人は中間の被りを目指すべし。
Point2.被り方は浅いほどラフ。
「後ろ被り」と「ツバ曲げ」はどうなの?
山梨 次は「後ろ被り」。東洋の守護神 or ギャングスターというリスキーな被り方ですが、お客さんが挑戦するとしたら、遠山さんはどのようにアドバイスしますか? 遠山さん 僕は好きだけど、
「ちゃんとしている」ようには見られませんからね。あえてやんちゃなイメージを目指すならいいんじゃないでしょうか。
山梨 これもどう見られたいか、という話ですね。 遠山さん そう。あ、ただ後ろの調整具はアジャスタータイプじゃないほうがいいです。スポーティな感じが出すぎちゃうので。
山梨 あと、ツバを曲げるか曲げないかはどう考えるべきしょう?遠山さん自身は曲げる派と言っていましたね。
遠山さん そうですね。僕の好みだけでなく、今のトレンド的にもちょっと曲げていた方がいいと思います。
山梨 言われてみれば、真っ直ぐの人って最近見ないかもしれない……。
Point1.真っ直ぐなツバのキャップは、次のトレンドまで寝かせよう。 “前髪出す派”ってどうでしょう?
山梨
最後は、「前髪をしまうか、出すか」問題。いわゆる“前髪重め”なメンズからすると悩みますよね。
遠山さん
ちょっと前までは、男性でおでこが隠れている人自体少なかったんです。おそらく「前髪があるとちょっと暗い人」みたいな共通認識があって、キャップも前髪出す派の人はそもそもいなかった。でも、最近は前髪ありも全然アリになってきていますよね。
山梨
ということは、遠山さん的にはOK?
時代は変わったねえ……。
遠山さん
今若い子がやるなら可愛らしくていいのかなって思います。それに、前髪が重い人がおでこを出して被ったら、髪のセットが台無しですからね。
山梨
むしろ前髪を出したほうが合理的だと。
遠山さん
そうそう。前髪が主張する分、キャップがコーディネートの大きなアクセントにはなることはないと思いますが、ちょっぴりストリート感を取り入れるくらいならいいですよね。
Point1.若い子が前髪を出すのは問題なし!
Point2.ちょっとしたアクセントを取り入れるのに最適。
キャップを使ったおすすめコーデ2つ
被り方を教わったところで、ここからは実践編。遠山さんに、キャップを使ったコーディネートを教えてもらいました。明日からの着こなしの参考にどうぞ!
コーデ1:ベーシックな夏スタイルの“まとめ役”に
遠山さん
インディゴの残ったデニムにブラックのサンダルを合わせ、赤いポロシャツをアクセントにしたメリハリのあるコーディネートにしました!
遠山さん
ブラックのキャップをシューズの色と合わせるようにしています。ちなみにこれ、ヒップホップ界隈でよく見られる手法です。これで全身の統一感も申し分なし。
コーデ2:大人のシャツスタイルの“ハズし”にも
遠山さん
清潔感があるホワイトのシャツと、カモフラージュ柄のショートパンツをミックス。シャツを主役にしつつも、真面目な印象になりすぎない、大人の休日スタイルです。
遠山さん
足元はサンダルでリラックス感を演出しています。ソックスをかましたほうがイマ風ですね。このコーデの場合、ちょっぴり浅めにキャップを被るのが乙です。
ライター山梨のまとめ
遠山さんらしく、音楽の深い知識やユーモアを交えつつ、ハウツーを教えてもらえた今回の取材。経験者にアリ・ナシを教えてもらると、自信を持ってキャップを被れるようになるもの。ぜひ明日からのキャップコーデに役立ててみてください。
Lampa
住所:東京都杉並区高円寺南4-8-1
営業時間:13:30~19:30
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