2025年7月、フィリピン最大の「快楽都市」として、アジアの夜を彩ってきたアンヘレス。かつては、陽気なレディたちが誘うバーやゴーゴーバーがひしめき合い、連夜の熱狂が途絶えることはなかった。
しかし、あの悪夢のような新型コロナウイルスのパンデミックが、この街の運命を大きく狂わせた。

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 多くの店がシャッターを下ろし、消え去った。そして、生き残った店々も、その経営権は次々と韓国人経営者の手に渡っていったという。そう、アンヘレスの歓楽街は、気がつけば「韓国人客が主流の街」へと様変わりしていたのだ。

 だが、甘い蜜月は長くは続かなかった。頼みの綱だった韓国経済も、ここ数年で深刻な低迷期に突入。ソウルや釜山からクラーク国際空港へと降り立つ韓国人観光客の数は激減し、かつてのような活気は見る影もない。

 その影響は、航空路線にも如実に表れている。韓国とクラークを結ぶ航空便は、その凋落ぶりを雄弁に物語る。例えば、2019年7月頃にはソウル・仁川からクラークへ週に50往復以上もの直行便が飛んでいたが、2025年7月現在では週21往復にまで減少。

 釜山からの直行便も、2019年7月には週に10往復を超える便があったと見られるが、2025年7月時点では週4往復程度に留まっており、かつての活気には程遠い状況だ。

 まさに、韓国からの「カネの道」が細り、アンヘレスの夜が寂れていく現実を象徴しているのだ。


 地元で長年商売をしてきたという古参のバーオーナーは、寂しげに語る。「昔は日本人と韓国人で賑わっていたが、今は韓国人すら来なくなった。客単価も下がり、娘たちの生活も苦しい。中には店を辞めて、ハウスメイドとしてカタールに働きに行ったシングルマザーもいます」。

 かつての栄華はどこへやら。異国での刹那的な快楽を求め、財布の紐を緩めていた日本人旅行者たちの姿は激減し、韓国人客頼みとなった今、その韓国経済の不調が、アンヘレスの夜に深い影を落としている。この街は、このまま「忘れ去られた快楽都市」となってしまうのか?
【編集:NK】
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