フィリピンの首都マニラで日本人男性2人が銃撃を受け、死亡した事件で、現地当局が計画的な殺人として捜査を進めている。殺害を実行したとされる2名のフィリピン人兄弟が逮捕され、別の日本人から多額の報酬で殺害を依頼されたと供述していることが明らかになった。
警察当局は、逃走中の共犯者とともに、事件を主導したとされる日本人の行方を追っている。

その他の写真:フィリピン警察

 事件は2025年8月15日午後10時40分ごろ、マニラ市内の繁華街マルバー通りで発生した。犠牲となったのは、ナカヤマ・アキノブさん(41歳)とサトリ・ヒデアキさん(53歳)の2人。現地メディアの報道によると、被害者らはタクシーを降りた直後、拳銃を持った男に射殺された。その後、犯人は所持品を奪った。

 マニラ警察管区(MPD)は、特別捜査班「SITG MALVAR」を設置し、捜査を開始。複数の防犯カメラ映像を分析した結果、容疑者として2名のフィリピン人兄弟を特定し逮捕した。

 アルバート・マナバット・イ・ヌキ(50歳): 銃撃を実行したとされる男。

 アベル・マナバット・イ・ヌキ(62歳): 被害者らの旅行ガイドを務めていたとされる男。

 両容疑者は現在、殺人と窃盗の罪で起訴され、警察に拘束されている。警察当局は、逃走中の3人目の共犯者(ジョン・ドウ)の行方を追っている。

 逮捕された兄弟は、警察の取り調べに対し、別の日本人から被害者2人の殺害を指示されたと主張している。
供述によると、その日本人は被害者にも顔見知りだったとされ、殺害の報酬として900万フィリピンペソ(約2300万円)が約束されていたという。

 この供述から、当局は当初の強盗殺人という見方から、金銭トラブルなどを背景にした計画的殺人事件として捜査を切り替えた。被害者らが頻繁にフィリピンを訪れていたことからも、綿密な計画に基づいた犯行である可能性が高いと判断されている。

 マニラ市長のフランシスコ・モレノ氏は8月19日のメディアブリーフィングで、「正義が果たされるまで決して休まない」と述べ、事件の徹底解明を誓った。警察当局は、首謀者とみられる日本人の特定を急いでいる。

 今回の事件は、フィリピンに滞在する日本人にとって、安全上の懸念を改めて浮き彫りにした。犯罪学の専門家によると、海外での邦人殺害事件は、単独犯による強盗が動機となるケースだけでなく、金銭トラブルや人間関係のもつれが背景にあることが少なくない。

 マニラの繁華街、特にマラテ地区のKTV(カラオケバー)周辺では、夜間に日本のヤクザや韓国のヤクザとみられる人物が集まることがあり、雰囲気が異様だと指摘されている。このような場所は、犯罪組織の温床となる可能性を否定できない。

 今回の事件も、単純な強盗ではなく、日比にまたがる犯罪ネットワークが関与している可能性も視野に入れる必要があるだろう。

 今後、警察の捜査が進むにつれ、事件の全容がさらに明らかになることが期待される。しかし、在留邦人や観光客は、フィリピンの治安状況を過信せず、夜間の単独行動を避け、不審な人物や金銭が絡むトラブルには十分に注意を払う必要がある。
今回の痛ましい事件は、海外でのリスク管理の重要性を改めて我々に突きつけたと言える。
【編集:TOMOTA】
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