2025年8月、ソウルの高層ビル群の足元で、早朝から日雇いの仕事を求める人々が列をなす。しかし、その多くが高齢を理由に仕事に就けず、厳しい現実を突きつけられている。
韓国社会が抱える深刻な問題の一つ、高齢者の貧困だ。この現実は、世界が憧れるK-POPや美容文化の華やかさとは裏腹に、社会の深い闇を物語る。

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 韓国の66歳以上の高齢者の貧困率は約4割に達し、日本の約2倍という驚くべき水準だ。その背景には、年金制度の未整備と受給額の少なさがある。物価高騰が生活を圧迫するなか、多くの高齢者が十分な年金を受け取れず、日々の生活に困窮する。住居においても、劣悪な環境の「チョッパンチョン」と呼ばれる狭い部屋に住まざるを得ない人々が少なくない。

 さらに、貧困は高齢者を詐欺や犯罪の被害に遭わせるリスクを高めている。政府支援を謳う詐欺サイトに騙され、個人情報を悪用されるケースも報じられており、生活困窮者が救済を求めた結果、さらなる苦境に陥る悪循環が生まれる。

 国家としての救済は明らかに不十分だ。年金制度は老後の安定を保障するにはほど遠く、社会保障のセーフティネットも十分に機能していない。高齢者の貧困は、個人の努力不足ではなく、社会構造の歪みによって引き起こされていると言えるのだ。このままでは、韓国は経済的な豊かさとはかけ離れた、老人が見捨てられる社会へと向かう危険性をはらんでいる。


 国民の老後を保障する制度の抜本的な改革なくして、この問題の解決は不可能だ。華やかな成功の陰で、多くの高齢者が明日への希望を失っている。今こそ、韓国社会全体でこの現実と向き合い、未来の社会像を真剣に問い直す時が来ている。
【編集:YOMOTA】
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