2025年8月14日、中国文化と観光部国際交流局の主催により、「アジア旅游商大会2025」および「ニーハオ! 中国アジア旅游商大会FAMツアー2025」(8月14日から22日)が開催された。本事業は、中国インバウンド観光のさらなる発展と、アジア各国との観光交流の強化を目的としており、日本、韓国、タイ、ベトナムをはじめとするアジア諸国のメディアや旅行業関係者が一堂に会した。


その他の写真:道教の始祖・老子を象徴する「老君岩造像」

 今回のFAMツアーでは、中国を代表する歴史と文化、そして絶景が詰まった観光地を視察。その舞台となったのは、福建省(泉州)、甘粛省(敦煌・張掖)、遼寧省(瀋陽)の3エリア。近年の中国観光の魅力を語る上で欠かせない場所として、それぞれの訪問地で体感した見どころを、ダイジェストで紹介する。

 ツアーの始まりは、中国東南沿岸に位置する福建省・泉州。古くは「刺桐」と呼ばれ、海上シルクロードの起点として繁栄した街だ。市街地からほど近い場所にありながら、緑豊かな自然と霊気に満ちた空間が広がる清源山風景名勝区では、古代中国の歴史を感じる観光スポットが点在している。

 続いて足を運んだのは、中国武術の発展に貢献したとされる南少林寺「光大少林」。禅と武の精神を今に伝える寺院であり、境内には修行僧たちが行き来する姿が見られた。中国四大古橋のひとつ「洛陽橋」は、2021年に「宋元中国的世界海洋商貿中心」として世界文化遺産に登録されている観光スポット。「シュンプー民俗文化村」での散策では、伝統的な花簪を髪に飾り、民族衣装に身を包んで町並みを歩く親子や女性たちが楽しそうに行き交う姿があった。古き良き中国に触れるような感覚を味わえるのは、この地ならではの魅力である。

 FAMツアーのハイライトともいえるのが、シルクロードの要衝である甘粛省・敦煌。
中国国内の旅行先としても絶大な人気を誇る観光地だ。今回の視察で訪れた「敦煌莫高窟」は、かつて井上靖の小説『敦煌』で描かれ、日本でも広く知られる世界遺産。時を超えて語りかけてくるその姿は、足を運び、実際に目で見るからこその感動がある。

 次に足を運んだのは「鳴沙山」と「月牙泉」。広大な砂丘の連なりは、まさに大自然の造形美といえるだろう。そこから張掖に移動し、「七彩丹霞風景区」を訪問した。大地に広がる赤や黄、緑の層が織りなす絶景は、まるで大自然が描いた巨大なキャンバス。また、「馬蹄寺石窟」や「平山湖大峡谷」といった秘境スポットでも、大地の雄大さを存分に体感した。この地でしか味わえない非日常のスケール感が、甘粛省で味わえる。

 旅の終盤に訪れたのは、中国東北部に位置する遼寧省・瀋陽。清王朝発祥の地であり、歴史と近代都市の両面を楽しめるエリアだ。ここでは、紫禁城と並ぶ重要な宮殿建築である「瀋陽故宮」へ足を運ぶことに。
方城文化観光エリアでは、地元の文化と芸術を体感し、瀋陽の多彩な魅力を再確認できた。夜は、渾河を巡るナイトクルーズに参加。そして、この地でアジア旅游商大会2025が開催され、観光プロモーションイベントで中国の未来に向けた観光戦略が語られた。

 今回のFAMツアーで巡った3つの地域はいずれも、中国観光の多彩な魅力を凝縮した場所だ。海と山、砂漠と都市、悠久の歴史と現代の活気。それぞれが個性的でありながら、中国という大きな物語の一部をなしている。旅を通じて感じたのは、「注目の観光スポットを楽しむ」ではなく「文化と歴史に触れる深い体験こそが心を動かす」ということ。シルクロードの遺産や、歴史とともに歩んできた街並み、そして人々の温かいもてなし。その一つひとつが、中国という国の奥行きを教えてくれる。FAMツアーを通して中国の新たな魅力を発見することができた。
【撮影/取材:小川いずみ】
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