2025年8月、「アジア旅游商大会2025」が開催され、日本、韓国、タイ、マレーシア、スリランカなど、アジア各国からFAMツアー参加者が集まった。視察7日目、8日目、最後に訪れた遼寧省・瀋陽市は、東北地方の最大級の都市であり、歴史・文化・交通・商業の中心として、古来より多彩な顔を持つ都市である。


その他の写真:ニーハオ! 中国アジア旅游商大会FAMツアー2025の参加者

 常住人口約825万人の都市である瀋陽、その中心部・瀋河区には文化観光の拠点が集中している。都市の景観は、満州時代の歴史的建造物と現代的な建物が共存し、古き良き時代の雰囲気を感じさせながらも、発展する経済都市としての顔を合わせ持つのも特徴だ。また、高速鉄道や高速道路が市内を放射線状に走り、東北地方の鉄道と空路のハブとしての役割を果たしている。

 瀋陽の街を歩けば、満州族の伝統と現代文化が自然に交わる様子が見えてくる。街角には古い建築が残り、カフェやショップが立ち並ぶ通りもあれば、北陵公園のような広大な緑地や川沿いの散策路もあり、自然の景観を楽しむこともできる。こうした多彩な要素が、訪れる人々を飽きさせない魅力となっている。

 街の中心にある沈陽城文化観光区は、文化観光の拠点として整備されている。ここには瀋陽中街や瀋陽故宮(瀋陽故宮博物院)といった歴史と文化を感じられるスポットが集中しており、訪れる人々は、広場や歩道、公園を巡りながら歴史散策や地元文化を体験することができる。飲食店やレストランも多く、散策の合間に地元の味を楽しむのもおすすめだ。

 その中でも、多くの観光客で賑わっているのが瀋陽故宮だ。1625年に太祖ヌルハチによって着工され、1636年に完成したこの皇城は、清朝初期の権威と威厳を伝える重要建築。総面積は約6万平方メートル、70以上の建物と300以上の部屋が整然と並ぶ。
北京の故宮に比べれば規模は小さいものの、その建築美と歴史的価値は決して劣らない。東路正面に建つ大政殿は、大典が行われた場所。中路には崇政殿や鳳凰楼が並び、皇帝の玉座や豪華な宴会場が配置されている。鳳凰楼は故宮で最も高い建物であり、その楼上からは当時の市街地を一望できたという。歴代皇帝の知識や文化活動の中心でもあった瀋陽故宮は、北京遷都後も離宮として使用され、皇帝や皇后、皇族の生活空間として機能した歴史を持つ。現在は博物館として公開され、優雅な家具や調度品、食器類が展示され、訪れる人々は清初の宮廷文化に触れることができる。

 瀋陽故宮から徒歩圏内にある中街エリアでは、「頭条胡同」が美食ストリートとして人気だ。かつて栄えた場所が、現在は伝統的な飲食店とショッピングモールが立ち並ぶ活気あふれる通りとなっており、瀋陽の賑わいを肌で感じることができる。こうして歴史と現代が交錯する瀋陽の街を巡ることで、満州族文化の深さと都市の進化を同時に体感することができた。瀋陽観光では、渾河でのナイトクルーズも体験。夜の渾河を巡りながら楽しむ船上での会話や、街の夜景を背景に写真撮影は、都市の喧騒から離れ、心にゆとりをもたらす時間となった。

 また、視察最終日はアジア旅游商大会2025が開催され、中国茶や「剪紙(せんし)」と呼ばれる切り絵、古き良き工芸品など中国の伝統文化に触れる体験も行われた。
古代からの歴史を宿す都市でありながら、現代的な都市機能も充実している瀋陽。古代と現代、文化と自然が調和するアジアの観光都市としてますます注目される存在である。
【撮影/取材:小川いずみ】
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