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デモ隊は警察のバリケードを突破し、国会議事堂へと押し寄せた。その行動の背景には、インターネットとソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及が大きく関わっている。かつては政府や一部のメディアによってコントロールされていた情報が、今や個人のスマートフォンを通じて瞬時に拡散される。この情報発信力の民主化が、若者たちの不満を可視化し、組織化する原動力となった。
ネパール経済は、観光業や海外からの送金に支えられ、近年緩やかな成長を続けている。しかし、その恩恵はごく一部の特権階級に集中しており、大多数の国民、特に若者はその恩恵を実感できていない。今回のデモで「ネポキッズ」(ネパールの特権階級の二世)という言葉がSNSで拡散されたことは、この社会的な格差に対する若者たちの憤りを象徴している。
数十年前、カトマンズに証券取引所が開設された際の初日の取引額は、わずか日本円で17万円程度だった。これは、当時のネパールがいかに市場経済の未熟な段階にあったかを示している。しかし、今日では証券市場も拡大し、企業活動は活発化している。
インターネットとSNSは、情報を伝達する強力なツールであると同時に、社会の不安定要因にもなりうる。政府やエスタブリッシュメントにとって都合の悪い「闇」の情報、例えば汚職や不正蓄財に関する内部告発などが、瞬時に拡散され、人々の怒りに火をつける。今回、オリ政権が短期間で崩壊した背景には、このような情報がSNSを通じて広範囲に共有されたことが挙げられる。
隣国スリランカやバングラデシュでも同様の政変が相次いでおり、南アジア地域全体で、若者の不満が政治を揺るがす新たな潮流が生まれている。ネパールは、貧困、失業、汚職という構造的な課題に直面している。この国の未来は、いかにして若者たちの怒りと向き合い、透明で公正な社会を構築できるかにかかっている。今回の政変は、その変革の第一歩となるか、あるいはさらなる混乱を招くのか。ネパールの行方から目が離せない。
【編集:af】