近年、社会課題として注目される「ファッションロス」。大量生産・大量消費のサイクルによって売れ残った衣料が廃棄される問題は、日本国内だけでも年間約50万トンにのぼるとされている。
この現状を変えるべく、SDGs目標「つくる責任・つかう責任」を掲げ、持続可能なファッションづくりに挑戦する企業がある。それが2024年12月に設立された株式会社カナエルスだ。

その他の写真:株式会社カナエルス

 同社は、アパレル業界で20年の経験を持つ青木竜社長が立ち上げたOEM企業。製造のプロフェッショナルとしての知見を活かしながら、余った生地の再活用や職人の豊かさを守る取り組みを通じて、社会的課題の解決にも真摯に向き合っている。

アパレル業界で培った20年の経験

 青木社長は、氷河期世代の厳しい就職活動を経てアパレル業界に飛び込み、OEM企業で生産管理から営業まで幅広く経験を積んだ。国内外の工場を開拓し、縫製現場を熟知する「現場の目線」と「経営の視点」を兼ね備えた稀有な存在へと成長。その20年のキャリアが独立の土台となった。

 社名に込めた「叶える」と「笑顔」
会社名「カナエルス」には、「叶える」と「笑顔」の二つの意味が込められている。
「親が営んでいた鼎工業の名前を残したい。そして、顧客や職人の笑顔を叶える存在でありたい」。そう語る青木社長の想いが、社名そのものに宿っている。

 信頼とこだわりで勝負するOEM

 独立直後から取引先が変わらずついてきたのは、青木社長が築いた20年の信頼の証だ。
特に、シャツやコートといった「伸びない生地」に強みを持ち、ハイブランドやセレクトショップ向けの製品を多く手掛ける。

 「価格競争ではなく、こだわりと想いにフォーカスしている企業と共に服を作りたい」と語る青木社長。その姿勢は、単なる下請けではなく“パートナー”としてブランドと伴走するスタイルを確立している。

 ファッションロスを減らす挑戦——SDGsを実現する自社ブランド

 カナエルスは、OEM事業にとどまらず、自社ブランドの立ち上げにも挑戦している。その特徴は、余った生地を活用した「捨てないものづくり」だ。
「余剰在庫を活かし、新しい洋服として生まれ変わらせる。SDGsの観点からも意義のある挑戦だと思っています」こうした取り組みは、廃棄を減らしながらも、消費者に新たな価値を届ける。まさに「つくる責任・つかう責任」を体現するアプローチだ。

 職人と業界を豊かにするために

 青木社長の視線は、自社の成功だけにとどまらない。「職人が豊かになれば業界全体が良くなる。日本製の価値を守り、ファッション業界を次世代につなげていきたい」価格だけを追い求めるファストファッション全盛の時代にあって、職人の技術と誇りを守ることは急務だ。カナエルスは、サステナブルなものづくりと業界再生の両立を目指している。


 一緒に高め合う未来へ

「一方的ではなく、一緒により良いものをつくっていきたい」顧客や職人と共に成長し、笑顔を共有する。その信念は、社名「カナエルス」の体現そのものだ。

 20年の経験と社会的使命を背負い、青木社長の挑戦は続いている。ファッションロス削減、職人支援、そして持続可能な未来へ——株式会社カナエルスの歩みは、これからの日本のアパレル業界に新しい光を投げかけている。
【編集:af】
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