2025年10月、フィリピンの「国民食」とも言われる豚の丸焼き「レチョン」は、祝い事には欠かせない至高のご馳走だ。ミンダナオ島の中心都市ダバオでも、その文化は深く根付いており、市内にはレチョン専門店が軒を連ねる。
ある老舗店で供されるレチョンは、その絶妙な塩加減と焼き加減から、地元住民のみならず観光客をも魅了している。

その他の写真:「Dimple's Lechon House」

 レチョンは、子豚や中くらいの豚を一頭丸ごと、炭火で数時間かけてじっくりと焼き上げる豪快な料理である。その調理法はシンプルながら奥深く、最も重要な要素は、何と言っても「皮」のパリパリとした食感だ。

 ダバオ市内の人気店「ディンプルズ・レチョン・ハウス」では、店の外に設置されたガラスケース越しに、こんがりと焼き上げられた巨大なレチョンが鎮座し、道行く人々の食欲をそそる。その見事な飴色の皮は、まさに芸術品だ。

 店内で供されるレチョンは、1キロあたり800ペソ(約2000円)という価格帯で、地元の食卓を支える存在となっている。一口頬張ると、まずパリパリ、サクサクとした皮の心地よい歯ごたえが広がり、直後に、じっくりと火が通った肉のジューシーな旨みが溢れ出す。

 「この店のレチョンは、セブやマニラのものと比べて、塩加減が本当に絶妙なんです」と常連客の一人は評価する。「ソースをつけなくても十分に美味しく、豚肉本来の風味を味わえる」と、その味へのこだわりを絶賛する。

 フィリピンのレチョンは、地域によって特色があり、セブ島のものは塩味が強く、ダバオのものはよりマイルドで、日本人にも親しみやすいと言われる。同店では、レチョンの他にも、炭火で焼かれた「レチョン・マノック」(焼き鳥)や、「ルンピア」(春巻き)、「アドボ」(煮込み料理)など、フィリピンの日常的な惣菜も豊富に並べられ、食文化の多様性を示している。

 フィリピンの「レチョン」は、単なる料理ではなく、家族や隣人との絆を深め、人生の節目を祝うための「祭りの象徴」である。
経済発展が進むダバオにおいても、この伝統的な食文化は未来へと受け継がれていく。

【編集:LN】
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