台風25号の直撃から4日が経過したフィリピン・セブ島では、インフラの復旧が一定程度進む一方で、被災者への食糧支援が本格化している。しかし、支援物資の配布現場では、手続きの煩雑さや政府職員の不在により、物資が山積みのまま被災者が長時間待機を余儀なくされる「立ち往生」の状況が見受けられた。


その他の写真:吉田 正昭さん 提供写真

 既報の通り、セブ島リロアンに在住し、自宅で床上浸水に見舞われた日本人、吉田正昭氏も、9日朝、自治会(バランガイ)役員からの声がけで、現地の食糧配布現場を訪れた。

 役員は当初、ビサヤ語(現地語)で吉田氏に声をかけたため、内容は通じなかったという。その後、英語の通じる人物を連れて改めて説明を受け、身分証明書を持参すれば小学校で政府からの食糧支援を受けられることを知った。

 吉田氏は「外国人である自分にまでわざわざ知らせてくれたことに感謝している。状況によっては辞退も考えたが、まずは現地の状況を知るために向かった」と語る。このエピソードは、混乱した被災地にあって、地域社会が国籍を問わず支援の手を差し伸べようとしている実態を示すものだ。

 吉田氏が訪れた近隣の「YATI ELEMENTARY SCHOOL」(ヤティ小学校)の体育館には、すでに大量の救援物資が運び込まれていた。箱にはフィリピン政府の支援を示す「BAGONG PILIPINAS FAMILY FOOD BOX(新しいフィリピンの家族用食料箱)」の文字があり、米や缶詰などが入っていることが確認できる。物資は被災者の待機スペースを埋め尽くすほど山積みになっていた。

 体育館には、住所別にグループ分けされた多くの被災者が集まっていたが、配布はすぐには始まらなかった。山積みの物資を前に、人々はただ待っているだけの状態だったという。

 周りの被災者に尋ねたところ、「政府の役人が来ないと始まらない」という説明だった。


 長時間の待機に耐えかね、パラパラと帰宅する人が出始めたため、吉田氏もいったん自宅に戻った。
大量の物資が届いていながら、配布が行政側の準備不足や手続きの遅延によって滞る状況は、災害発生後の支援活動における「ラストワンマイル」の難しさを浮き彫りにしている。特に、物資の公正な配布を徹底しようとするあまり、現場での柔軟な対応が取れず、緊急性の高い被災者が支援を受け取るまでに時間を要するという、フィリピンの災害支援が抱える課題が露呈した形だ。

 今後、迅速かつ公平な支援物資の配布体制が確立できるかどうかが、被災者の生活再建の鍵を握る。

 13時30分追記,1時間後に支援物資の配布が開始された。
【編集:EULA】
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