生成AI(人工知能)の進化が世界経済を大きく揺さぶる中、生産性の停滞が長年の課題とされてきた日本で、「会社の裏側」から変革を仕掛ける若き起業家が注目を集めている。

その他の写真:https://reefay.jp/index.html(リーフェイ株式会社)

 リーフェイ株式会社代表の藤原弘人氏は、中小企業に根強く残る「バックオフィス(経理・総務・労務)」の非効率に着目。
日本特有の業務慣習に切り込み、AIを活用した業務改善の支援に取り組んでいる。

 藤原氏のキャリアは異色だ。大学在学中に一度起業を経験した後、20歳から3年間、企業の経営秘書として現場に密着。日々の業務を通じて、経営を支える事務作業の膨大さと非効率さを痛感したという。

 「議事録作成や資料準備、スケジュール調整など、泥臭い実務に多くの時間が費やされていました。役員会議の準備だけで丸2日かかることもあり、テクノロジーで解決すべき課題だと強く感じました」

 2022年末、ChatGPTの登場を機に「日本の現場を変える決定的な転機が来た」と確信。秘書時代に培った知見をもとに、業務自動化ツールの開発に乗り出した。

 多くのAI企業が営業やマーケティング領域に注力する中、藤原氏はあえて「バックオフィス」に特化。経理や総務といった業務こそが、日本企業の生産性を最も圧迫していると指摘する。

 「AIを導入することで、人は本来注力すべきコア業務に時間を割けるようになります。裏方の効率化こそが、全体の生産性向上につながるのです」

 実際の導入事例として、従業員50人規模の建設会社では、領収書の撮影からOCR(光学的文字認識)、勘定科目の自動判定、会計ソフトへの入力までを一貫して自動化。月40時間かかっていた経理業務が12時間に短縮され、経理担当者の残業はゼロに。
空いた時間は営業支援に充てられるようになったという。

 藤原氏のソリューションは、医療、士業、メディア、建設、不動産など多様な業種に広がりを見せている。税務AIや勤怠AIといった内製開発も進行中で、企業ごとの業務フローに合わせたカスタム設計が強みだ。

 「AIは『人を減らす技術』ではなく、『人を活かす技術』です。日本の文化や業務慣習に即した実装こそが、グローバル競争で遅れをとる日本企業を再起動させる鍵になると信じています」

 導入が進まない日本社会に向けては、「学歴よりも行動とAIリテラシーが求められる時代。怖がらずにAIに触れ、自分の可能性を広げてほしい」と次世代へのメッセージを送る。

 藤原氏の挑戦は、AI時代における「日本版生産性向上」の新たなモデルとして、地方のDXや中小企業の再生において重要な試金石となりそうだ。
【編集:Y.U】
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