地政学リスクが日本の産業構造に再編圧力、米国の戦略的パートナーとしての役割に期待

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 米中対立の長期化と台湾情勢の緊迫化が、日本経済の再評価を促す契機となっている。サプライチェーンの「脱中国」が加速する中、日本が米国の戦略的パートナーとして製造業のハブ機能を回復する可能性が浮上している。
素材・加工産業を中心に、地政学的リスクが逆説的に日本企業の競争力を押し上げる構図が鮮明になりつつある。

 台湾問題は米国覇権の「最優先課題」

 インド太平洋地域における米国のプレゼンス維持において、台湾問題は最重要課題とされる。米国が基軸通貨ドルの信認を維持し、世界の警察としての地位を保つためには、台湾防衛が不可避との見方が広がっている。仮に中国が台湾を併合し、太平洋への出口を確保すれば、米国は西太平洋での制海権を喪失し、世界の貿易ルート(シーレーン)管理能力が問われる事態となる。これはドルの信認低下に直結するため、台湾問題は米国の覇権維持における「プライマリー(最優先)」の課題と位置づけられている。

 レアアース規制のジレンマ

 高市総理の台湾有事に関する発言を受け、中国側は強く反発。レアアース(希土類)の対日輸出規制に踏み切る可能性も取り沙汰されている。しかし、専門家は中国が長期的に強硬な報復措置を継続する可能性は限定的とみる。レアアース規制は短期的には日本企業に打撃を与えるが、長期的には西側諸国による「中国外し」と代替調達先の開発を加速させる「諸刃の剣」となるためだ。過去の教訓から日本や欧州は供給網の多角化を進めており、中国も自国の優位性を掘り崩す事態は避けたいのが本音とされる。

 米国製造業の「外注先」としての日本

 米国は国内製造業の回帰(リショアリング)を掲げるが、コストや人材面での課題が大きい。そこで注目されるのが、信頼できる同盟国に生産を委託する「フレンド・ショアリング」だ。
日本はロボティクス、造船、素材、レアアース精製などの分野で高度な技術を維持しており、米国のニーズと合致する。専門家は現在の状況を「80年に一度のチャンス」と表現し、冷戦期のような国際分業の再構築が進む可能性を指摘する。

 日本企業にとっての構造転換

 米中分断という構造変化は、長年デフレに苦しんできた日本企業に対し、戦略物資の供給拠点としての役割を再び与える契機となる。米国との連携強化により、日本は製造業の再評価を受け、国際経済の中での位置づけを再構築する可能性が高まっている。
【編集:YOMOTA】
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