タイ南部は2025年11月25日現在、連日の猛烈な豪雨に見舞われ、広範囲で洪水と土砂崩れが発生し、深刻な危機的状況に直面している。

その他の写真:大洪水に見舞われたハジャイ市内で救援も難航している(タイメディアより)

 被害が集中しているのは、南部経済の中心地であるソンクラー県(ハジャイ)をはじめ、スラーターニー県、ヤラー県、サトゥーン県といった複数の南部県にわたる。
この災害により、ソンクラー県全体で46万5,000人を超える人々が被災し、特にハジャイ郡では24万3,000人以上が影響を受けていると報告されており、広範囲で住宅の浸水や公共施設の被害が発生し、これまでに死者も確認されている。

 南部随一の商業都市であるハジャイでは、市街地の主要道路が冠水し、交通が完全に寸断されたため、多くの住民や観光客が宿泊施設などで孤立状態に置かれている。市内の多くの地域で洪水は依然として上昇傾向にあり、多くの道路や主要な商業地区が深刻な浸水に見舞われ、交通はほぼ麻痺状態にある。この影響は空港にも及び、市街地からのアクセス困難により、ハジャイ空港では一時的に千人を超える乗客が足止めされる事態となった。

 また、基幹インフラであるタイ国鉄の南部線は、線路の冠水により複数の列車が運休を余儀なくされ、長距離バス路線も運行を停止するなど、物流と人の移動が大きく滞っている。さらに、浸水が深刻な地域では送電設備や通信設備が機能停止に陥り、電気や電波が途絶したことで、孤立した人々が救援を呼ぶことすら困難になっている実情が伝えられている。

 ハジャイでは、過去3日間の降雨量が2000年や2010年の歴史的な洪水記録をはるかに上回り、ハジャイ市当局が非常事態を宣言した。さらに、ハジャイ市長は、100以上のコミュニティの住民に対し、家財道具を高台に移動し、危険地帯から直ちに避難する準備をするよう緊急避難を命じる通知を発令した。

 事態を重視したタイ政府は、首相が被災地を訪れ直接対応を指揮し、迅速な支援計画の実行と、通常の補償に加えて追加の支援を検討する方針を示した。また、副首相は道路の寸断で地上からの救援が困難な地域に対し、直ちにヘリコプターを派遣し、空からの調査と緊急救援を進めるよう指示するなど、政府一体となった救援活動が進められている。地方自治体レベルでは、サトゥーン県などで非常事態対策センターが開設され、食料支援のほか、洪水後の感染症発生を防ぐための監視や医療チームの準備が進められている。

 しかし、タイ気象局の予報によると、南部地域では今後も引き続き強い雨や激しい雨が降る見込みであり、天候の抜本的な回復はすぐには見込めない状況だ。
ナコンシータマラートからナラティワートにかけての東海岸を中心に、今後数日間は広範囲で激しい降雨が予想され、河川の氾濫や鉄砲水、土砂崩れへの警戒レベルは依然として高いままだ。また、タイ湾およびアンダマン海では波が高く、船舶の航行にも厳しい状況が続く見通しである。そのため、人命救助と緊急支援が最優先されており、道路や鉄道、電力、通信といったインフラの本格的な復旧には、水位が十分に低下し、天候が回復するまで時間を要することが見込まれている。
【編集:Ekkachai】
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