自然分娩では、母胎や胎児になんらかの生命的危険が起こる想定時に「帝王切開術」が用いられる。今、ネット上では、お腹を痛めて子を産んだは自然分娩だけだという論調が幅をきかせているが、文字通り腹をメスで切る点でのお腹を痛めるのは「帝王切開」だと筆者は考える。
自分の命をかけて出産を行う、お母さんたちは、どんな出産方法でもリスペクトされていいのだ。どちらも「お腹を痛めた」には違いない。

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 韓国でその出産をめぐってひと悶着が起きた。午後7時という時間は、日本だとて韓国だとて、医療機関は時間外だろう。この時間に診てもらえるとしたら、救急のみか、厳しい設定だが、夜間診療している病院のみだろう。

 すでに破水してしまった妊婦がいた。破水より6時間経ってしまい、胎児の呼吸も弱まってきたことで、緊急帝王切開術に切り替えが決まった。その時間午後4時半。
胎児の呼吸は弱まったら、場合によってはすぐに止まってしまう危険性もある。一刻の猶予もなく、手術は始まったのだ。
医師の迅速な判断と処置で、元気な赤ちゃんが誕生し、母胎も守られた。

 しかしだ…問題はここではなく、出産時間にあった。
この赤ちゃんの父親は、四柱推命に傾倒していて、陣痛が始まってからというもの「午後7時生まれが幸せになるから、それまで産んではダメだ」と繰り返していた。なんなら自然に生まれてくるのが神様の思し召しだと言うことで自然分娩でいけ! も繰り返した。最後の最後になんというマタニティハラスメント! 。神様の思し召しというのはいつであってもどんな方法でも元気に生まれてくること一択しかないんじゃないの?

 「あと2時間半我慢すればよかったのに」
「診察時間内に済ませようとした医者の怠慢だ」。
出産直後の妻を労わるわけでもなく、自分の四柱推命説の正しさを説き続けた。

 かわいい赤ちゃんが生まれたばかりだが、この子の両親は離婚という選択を選ぼうとしている。赤ちゃんの出産時間を一生認められない父親に育てられるよりいいかもしれない。

 あとは、腹を痛めて産んだ母親が立派に育て上げることを祈るだけだ。だって、帝王切開で二人とも生き残ったのだから。
【編集:fa】
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