かつて英国の公道を象徴した名門ブランド、MG(モーリス・ガレージ)が、中国最大の自動車メーカーである上海汽車集団(SAIC Motor)の傘下で劇的な変貌を遂げている。

その他の写真:MG ダバオ市内の販売店(2026年1月5日撮影)

 1924年の創業から1世紀を超え。
経営不振と買収という荒波を越え、いまやフィリピン・ダバオ市を含む東南アジア市場の最前線で好調だ。この「英国の魂と中国の資本」の融合は、世界の自動車産業におけるパワーシフトを象徴するケーススタディと言える。

 MGの歩みは波乱に満ちている。20世紀半ばに黄金時代を築いたものの、2000年代に入ると親会社MGローバーの経営が悪化し、2005年に経営破綻。その後、資産は中国の南京汽車に買収され、さらに2007年に上海汽車(SAIC)が同社を吸収したことで、MGは完全に中国メーカーのブランドへと姿を変えた。

 SAICはこの買収を単なるブランド取得に留めず、英国でデザインし、中国で設計・生産することで、圧倒的なコスト競争力と最新のEV(電気自動車)技術を融合させたのである。

 フィリピン市場において、MGは当初代理店を通じて販売されていたが、2023年7月にはSAIC Motor Philippines, Inc. (SMP) が直接経営に乗り出した。これは同社がフィリピンを東南アジアにおける最重要拠点の一つと見なしている証左である。

 特にミンダナオ島の中心都市、ダバオ市は戦略的要衝だ。同市内では、地元の有力代理店であるGrand Canyon Multi-holdingsなどとの提携により、北部ラナン地区の「MG Davao」や南部「MG Matina」といった主要拠点を通じた地域密着型の展開を強めている。

 ダバオの消費者は、価格に敏感でありながらもスタイルや機能を重視する傾向が強い。MGはこのニーズを的確に捉えて、多角的なラインナップで市場を切り崩している。


 日系メーカーが伝統的に強いセグメントに直撃している。特にSUVのZSシリーズや、ガソリン車並みの価格帯で投入されるEVモデルは、急速にインフラ整備が進むダバオ市内でも存在感を増している。

 経済的視点で見れば、ダバオ市を含むミンダナオ島は2020年代後半にかけてフィリピン国内で屈指の経済成長率を記録すると予測されている。中間所得層の拡大に伴い、自動車需要は爆発的に伸びている状況にある。

 MGの成功は、「英国ブランドという信頼の象徴」と「中国企業のスピード感と圧倒的な製造コスト管理」が、この成長経済と合致した結果である。かつての経営不振を乗り越え、グローバル企業としての強みを最大限に活かすMGの姿は、多国籍化する自動車産業の象徴的な姿と言えるだろう。

 今後、さらなるEV充電インフラの拡充とともに、MGがダバオの地で「国民車」の一角を占める可能性はあり得る。
【編集:Eula】
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