タイ、ベトナム、ラオスなど東南アジア出身の僧侶たちが、犬一匹を伴いながらアメリカを南から北へと歩き続ける「平和の行進」が、いま全米で静かな注目を集めている。

その他の写真:平和の行進を続ける僧侶たちとアロカ(ネットメディアより)

 この行進は「Walk for Peace(平和のための歩行)」と呼ばれ、2025年10月にテキサス州フォートワースを出発した。
最終目的地はワシントンD.C.で、行程はおよそ3,700キロメートルに及び、約120日にわたって僧侶たちは日々黙々と歩き続けている。

 この行進は宗派や国家を超えた非暴力と平和の訴えを目的としたもので、中心的な役割を担っているのはタイ出身の僧侶一人であるとされるが、明確な階級や公式な指導者を名乗ってはいないものの、発信や判断の多くを担っており、事実上のリーダーと見なされている。

 この行進で象徴的な存在となっているのが、僧侶たちと共に歩く犬「アロカ」だ。アロカは、僧侶たちがかつてインドで行っていた平和行進の途中、自然と後をついて歩くようになった元野良犬である。行進に同行し始めて以降、事故や体調不良を経験しながらも世話を受け、現在に至るまで行進を共にしている。

 「アロカ」という名は、仏教用語で「光」や「覚醒」を意味するとされる。現在の行進では体調や安全への配慮から、必要に応じて車両で移動することもあるが、多くの区間で僧侶たちと並んで歩いている。沿道ではアロカに声をかけたり、写真を撮ったりする人も多く、僧侶だけの行進よりも親しみやすい印象を与えている。宗教的背景を持たない犬の存在が、人々の警戒心を和らげ、行進の趣旨に自然と関心を向けさせているとの受け止めも広がっている。

 米国内の反響は、平和的で象徴性のある行動として支持する声が多い一方、宗教活動を公共空間で行うことへの違和感や、動物を長距離行進に同行させることへの懸念を示す意見も、ごく一部では見られる。

 それでも僧侶たちは非対立の姿勢を崩さず、批判に対しても説明と配慮を重ねながら歩みを続けている。僧侶と一匹の犬が静かに大陸を横断する光景は、宗教的実践としての「歩く祈り」とも言える。
その静けさゆえに違和感を覚える人が存在するのも事実だが、分断が深まる米国社会において、対立を前提とした社会の在り方を自問する声も上がり始めている。

 そして、その姿は、かつてインドを独立へと導いたマハトマ・ガンジーを彷彿とさせるようにも見える。
【編集:そむちゃい】
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