ソニーグループが、テレビ事業の経営権を中国家電大手のTCL集団に事実上移管することが明らかになった。中国のポータルサイト・騰訊網などが伝えたところによると、ソニーは今月20日、「Sony」および「BRAVIA」ブランドの運営をTCLとの合弁会社へ引き継ぐことを決定した。
新会社の出資比率はTCL側が51%と過半数を占め、経営の主導権を握る。かつて世界を席巻した「日本勢のテレビ」が、製造面において事実上の終焉を迎えることになる。

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 ネット上では、かつて中国で見られた日本ブランドの模倣品になぞらえ、「ソニーがトニー(TCL製のソニー)になった」と揶揄する声も上がっている。しかし、産業界では今回の決定は驚きをもって受け止められていない。自前で液晶パネルを生産できなくなったソニーは、長年LG電子やTCLから供給を受け、組み立て自体もTCLに委託してきた。原価の7割を占めるパネルを他社に依存し、ブランドのロゴを貼ることで高価格帯を維持するビジネスモデルは、すでに限界に達していた。

 日本のテレビ産業は、1990年代には世界シェアの9割を独占する誇り高き「国策産業」であった。しかし、アジア通貨危機後に巨額の投資を断行した韓国勢や、政府の支援を背景に急成長した中国勢に押され、2012年にはソニー、パナソニック、シャープの主要3社で計1兆6000億円という巨額の赤字を計上した。かつての「四天王」のうち、シャープは台湾の鴻海精密工業の傘下に入り、東芝のブランドは中国のハイセンスへ渡った。さらに2024年にはシャープの堺工場が停止したことで、液晶パネルの火は発祥の地である日本から完全に消滅した。

 ソニーなどはその後、利益率の低いテレビから撤退し、イメージセンサーや車載用電池といった上流の基幹部品事業に活路を見い出してきた。だが、最終製品という「出口」を失うことは、部品事業の孤立を招く懸念も孕んでいる。
ブランドが「サプライヤー(部品供給企業)」へと化していく中で、現在の主力事業であるセンサーや電池が、かつてのパネルと同じ衰退の道を歩まないという保証はない。

 半世紀をかけて築き上げた頂点から、20年をかけて転落した日本のテレビ産業。その歴史を「長い別れ」と表現する向きもある。電子産業において永遠の王者は存在しないという冷厳な事実を、今回のソニーの決断は改めて浮き彫りにした。
【編集:af】
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