フィリピン南部ミンダナオ島の中心都市ダバオ。その南部に位置する住宅街、トリル地区の「ガイサノ・グランド・モール」を訪れると、食料品売り場の一角に鮮やかな紫や緑の箱が整然と積み上げられていた。
中国の伝統的な旧正月の餅「年糕(ねんこう)」、現地名「ティコイ」の特設コーナーだ。

その他の写真:イメージ(2026年1月30日撮影)

 かつてはマニラのチャイナタウンなど、華人コミュニティ中心の文化だったティコイだが、今やここダバオの郊外でも、旧正月を祝う光景は当たり前の日常となっている。棚に並ぶのは、マニラに本拠を置く老舗「永美珍(エン・ビー・ティン)」の製品。フィリピン国内で製造されるこの「国民的ブランド」は、物流網の発達とともに、ミンダナオの人々の食卓にも深く入り込んでいる。

 特に、ダバオでも愛される地産素材「ウベ(紫芋)」を練り込んだ紫色のティコイは、棚の中でもひときわ存在感を放つ。伝統的な中華の製法とフィリピンの豊かな大地の恵みが融合したその姿は、異なる文化を柔軟に受け入れ、独自の豊かさを育んできたこの国の縮図のようだ。

 モールの買い物客が次々と手に取る箱の中央には、黄金の「福」の文字が輝く。漢字は読めずとも、その文字が運んでくる「幸運」への願いは、地域や民族を越えて共有されている。

 ダバオは、多様な先住民族や移民が共生する「約束の地」として知られる。トリルのマーケットを埋め尽くすティコイの光景は、中華系文化がもはや外来のものではなく、ダバオの多様性を形作る大切なピースの一つであることを雄弁に物語っていた。
【編集:Eula】
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