熱帯の力強い太陽が照りつけるフィリピン南部の中心都市、ダバオの郊外。どこからか響く鐘の音に誘われるように、子供たちが小銭を手に走り寄る。
彼らのお目当ては、フィリピンの夏の風物詩である伝統的なアイスクリームの引き売りだ。

その他の写真:2026年2月1日 ダバオ市トリル地区で撮影

 色鮮やかな紫色の屋台には、誇らしげに「MC JAMES」の文字が躍り、店主が手際よくコーンに盛り付けるのは、ウベ(紅山芋)の紫色やチーズの黄色、チョコレートの茶色が重なった「ミックス」のアイスである。1個20ペソ(約53円)という手頃な価格で提供されるそれは、一口含めば日本のアイスクリームとは異なる、どこかシャーベットに近いシャリシャリとした独特の食感が喉を潤してくれる。ココナッツミルクをベースにした素朴な甘みと、時折混じるチーズの塩気が、火照った体に心地よい。

 この光景の傍らでは、同じく20ペソでふわふわの綿菓子も売られており、日本ではすっかり見かけることがなくなった引き売りのスタイルが今も息づいている。かつて日本の昭和の街角で見られた「チリンチリンアイス」を彷彿とさせるこの懐かしい情緒は、急速な経済発展を遂げるフィリピンにおいても色褪せていない。屋台には店主の連絡先やSNSのアカウントが手書きで記されており、伝統を守りつつも現代のツールをたくましく取り入れる地元の商魂が垣間見える。

 ショッピングモールの中には外資系の高級店が並ぶが、道端で手渡される20ペソのコーンには、数値では測れない心の豊かさが詰まっている。時代の変化とともに消えゆく景色が多い中、ダバオの郊外に響く鐘の音は、今も変わらず人々の日常に小さな「涼」と笑顔を届け続けている。
【編集:EULA】
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