フィリピン首都圏北部のブラカン州で進められている新マニラ国際空港建設事業が、東南アジアにおけるインフラ開発の新たなモデルとして注目を集めている。総事業費は約7356億ペソ、日本円で約2兆円に迫る巨額の民間投資プロジェクトだ。
同国最大の財閥であるサン、ミゲル、コーポレーションが主導し、2019年に政府と正式な事業権付与契約を締結した。当初の2027年開港目標は、大規模な埋め立て工事の慎重な進捗管理や環境対策、さらに世界的な資材価格の高騰などを踏まえ、現在は2028年以降の第1段階稼働を目指して調整が進んでいる。

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 建設現場の最前線では、グローバルな協力体制が構築されている。マニラ湾に面した広大な湿地帯を強固な航空拠点の土台へと造り変えるため、世界最高峰の浚渫技術を持つオランダのボスカリス社が約25億ドルの契約規模で地盤改良を主導している。そこに不可欠な要素として加わっているのが、日本の高度なエンジニアリング知見だ。日本の大手ゼネコンやエンジニアリング企業は、フィリピンが抱える地震や台風といった深刻な自然災害リスクに対し、マグニチュード8級の巨大地震や最大風速70メートルに及ぶ超大型台風にも耐えうるレジリエンスを提供している。これは地盤の安定化技術や最新の耐震設計の面で現地技術者から極めて高い評価を得ており、単なる建設支援を超えた質の高いインフラの提供として結実している。

 資金調達の面でも日本の存在感は際立っている。三井住友銀行をはじめとする日本の主要な金融機関が中心となり、大規模な融資パッケージを構成してプロジェクトの長期的な資金需要を支えている。こうした日本勢の参画は、フィリピンのインフラ整備が安価な初期コストや短工期を最優先する段階から、長期的な信頼性と維持管理コストの抑制を重視する成熟した段階へ移行したことを象徴している。過去に他国企業が主導したプロジェクトにおいて施工不良や運営上のトラブルが露呈した教訓から、フィリピン政府とサン、ミゲルは、50年先まで安定して稼働できる品質を優先し、日本や欧州の技術を選び取った形だ。

 新空港の旅客処理能力は最終的に年間1億人規模に達すると想定されており、すでに受容能力の限界に達している既存のニノイ、アキノ国際空港の慢性的な混雑を根本的に解消する期待がかかる。
マニラ首都圏の北側に位置する地理的優位性を生かし、周辺では高速道路や鉄道の接続計画も連動して動いている。これにより、北ルソン地域全体の物流効率が飛躍的に向上し、新たな産業集積地としての発展も見込まれる。サン、ミゲルが進めるこの事業は、単なる空港建設の枠を超え、周辺に経済特区や商業施設を配したエアロトロポリス構想として、フィリピンの国内総生産を数パーセント押し上げる経済効果があると試算されている。

 日本の技術と資本が深く組み込まれたこの巨大事業は、東南アジアにおける日本のインフラ輸出の競争力と信頼性を示す試金石となっている。2028年以降の開港に向けて、広大な埋め立て地には滑走路やターミナルの基礎が築かれつつあり、フィリピンの空の玄関口が塗り替えられる日は着実に近づいている。
【編集:Eula】
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