フィリピン大統領府反組織犯罪委員会(PAOCC)は2026年2月21日、同国北部パンパンガ州アンヘレス市において、違法なオンラインカジノ(POGO=ポゴ)に関連した詐欺行為に関与したとして、日本人3人と中国籍の男1人の計4人を逮捕したと発表した。日本大使館から提供された「特殊詐欺やオンライン詐欺、身代金目的の誘拐に関与している」との情報に基づいた共同捜査による摘発で、マルコス政権が進めるPOGOの全面禁止と外国人犯罪組織の掃討作戦の一環となる。


その他の写真:アンヘレス イメージ

 フィリピン主要メディなどによると、逮捕されたのは、日本国籍のオオ・リホ(27)、モリヤマ・ユウ(31)、カトウ・ヒロアキ(42)の3容疑者と、中国籍のワン・シンユ(32)容疑者。PAOCCによると、捜査当局は今月18日、アンヘレス市バランガイ・パンパンにある複合施設「フレンドシップ・プラザ」に踏み込み、不法滞在や身分証不保持などの入管法違反に基づく令状なしの逮捕を実施した。現場は、多くの外国人が出入りする地域として知られるが、当局は以前からこの施設内の一部が詐欺の拠点として利用されているとの疑いを深めていた。

 今回の摘発の端緒は、在フィリピン日本大使館が「対象者が通信詐欺や身代金目的の誘拐スキームに関与している疑いがある」とする具体的なインテリジェンスをPAOCCに共有したことだった。当局の調べに対し、4人は誘拐や恐喝への直接的な関与については否定しているものの、アンヘレス市内を拠点に展開されていた通信詐欺(スキャム)活動や、オンラインゲームを悪用した不正操作に参加していた事実については、おおむね認めているという。

 特に中国籍のワン容疑者は、同拠点のロジスティクス管理や新規要員のトレーニング、および重要な運営機能の統括を担っていた組織の中核的人物とみられている。日本人容疑者らも、ワン容疑者の指揮下で、主に日本国内の高齢者や資産家を標的とした投資詐欺や通信詐欺に従事していた可能性が高い。当局は、このグループがパンパンガ州を拠点に、主に日本や中国などの国外を標的とした大規模な詐欺ネットワークを形成していたとみて、押収したコンピューターやスマートフォンの解析を進め、組織の全体像と余罪の解明を急いでいる。

 フィリピンでは近年、POGOを隠れ蓑にした外国人による特殊詐欺や人身売買、誘拐事件が深刻な社会問題となっている。2023年に日本中を震撼させた「ルフィ」と名乗る指示役らによる広域連続強盗事件が、マニラ首都圏の入国管理局収容施設を拠点に引き起こされたことは記憶に新しい。これを受け、マルコス大統領は2024年7月の施政方針演説で、犯罪の温床となっているPOGOの年内全面撤廃を宣言。さらに2025年10月には、すべてのオフショア賭博事業を永久に禁止し、違法と定義する「2025年反POGO法(共和国法第12312号)」に署名し、規制を法制化した。


 この新法により、かつて合法的に運営されていたPOGOライセンスはすべて取り消され、運営に関わっていた外国人の労働許可やビザも即時無効となった。しかし、合法的な枠組みが消失した後も、今回摘発されたグループのように「アンダーグラウンド」へと潜伏し、拠点を小規模に分散させながら活動を継続する地下組織が依然として存在している。PAOCCのベンジャミン・アコルダ次官は声明で、「わが国を犯罪の拠点として利用しようとする外国人は決して容認しない。パートナー機関や国際的な連携を通じ、これら犯罪ネットワークを徹底的に解体するまで執拗に追跡を続ける」と強い決意を強調した。

 逮捕された4人は現在、マニラ首都圏タギッグ市にある入国管理局の収容施設(ビクタン収容所)に移送されており、医療検査を終えた後、検察官による取り調べ(インクエスト)を受けている。当局は今後、入管法違反および詐欺容疑で起訴し、刑期満了後に強制送還するとともに、ブラックリストに掲載してフィリピンへの再入国を永久に禁止する手続きを進める方針だ。日本大使館も、日本人容疑者3人の身元確認と詳細な関与状況について、フィリピン当局と緊密に連携して情報収集にあたっている。

 今回の摘発は、かつての「ルフィ事件」以降、日比両政府が犯罪情報の共有や共同捜査の枠組みを大幅に強化してきた成果の一つといえる。フィリピン当局は、パンパンガ州やマニラ首都圏周辺に依然として潜伏しているとみられる他の外国人詐欺グループについても、一斉摘発に向けた捜査を継続しており、今後も厳しい取り締まりが続く見通しだ。フィリピンが「犯罪者の楽園」と呼ばれた過去を払拭できるか、マルコス政権の実行力が改めて問われている。
【編集:af】
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