【その他の写真:雨漏り屋根、補修後】
セブ州の観光拠点として知られるマクタン島にある新築アパートでは、居住者たちが深刻な水回りの欠陥に苦しめられている。ある居住者は、一階の自室がスコールのたびに水浸しになるという異常事態に直面した。原因を調査したところ、屋外に設けられた排水溝の深さが圧倒的に不足しており、洗濯機の排水さえも受け止めきれずに逆流していたことが判明した。結局、排水溝をすべて深く掘り直すという、居住中とは思えないほどの大規模な土木工事を余儀なくされた。さらに、台所でも不備が相次いだ。シンクの下からは絶えず水が漏れ出し、確認すると排水ホースがどこにも固定されず、ただ差し込まれているだけの状態だった。挙句の果てには、ドアの取っ手が物理的に壊れて動かなくなり、居住者が自室に閉じ込められるという監禁状態まで発生した。この際は、大家へ緊急連絡を行い、ドアの鍵を丸ごと交換するまで脱出できないという、安全管理の根幹を揺るがす恐怖を味わったという。
こうした惨状はマクタン島に限った話ではない。フィリピン南部の大都市ダバオのトリル地区に居を構えた別の日本人男性も、住宅の質の低さに絶望している。利便性を求めて住宅の増設工事を行ったものの、完成したはずの屋根からは計五回にわたって雨漏りが発生した。
なぜ、これほどまでに杜撰な事態が日常化しているのか。その背景には、フィリピンの建設業界が抱える構造的な欠陥が横たわっている。第一に指摘されるのが、施工者の圧倒的な技術不足だ。現地では公的な資格を持たない労働者が安価な日当で現場を回しているケースが多く、水の流れを計算した勾配の作り方や防水の基礎知識を欠いたまま、見よう見まねで工事が行われている。第二に資材の質の悪さがある。建設コストを抑えるために、極端に薄い金属板や熱劣化に弱い安価な接着剤が多用される。これらはフィリピンの強い日差しと激しい雨という過酷な気候条件に耐えられず、短期間で機能を失ってしまう。
そして何より根深いのが、完璧を求めない社会的な習慣である。現地にはプウェデナという言葉があり、これは、これで十分、あるいは、まあいいかといった意味を持つ。
フィリピンでの住宅選びにおいて、日本的な、新築だから安心、あるいは、プロが作ったから大丈夫、という常識をそのまま持ち込むことは極めて危険である。安価な物件であればあるほど、その後の修繕費や精神的なストレスという形で、目に見えない多大なコストを支払うことになる。経済発展が著しいフィリピンだが、末端の施工技術や品質管理の意識は依然として発展途上の段階にある。
海外移住において、住まいは生活の基盤となる最も重要な要素だ。その足元が水に浸かり、頭上が雨漏りに晒されるようでは、真の安らぎは得られない。南国の楽園での理想の暮らしを手にするためには、あまりに高い授業料を払わなければならないのが、現在のフィリピン住宅事情の冷徹な現実である。居住者には、トラブルが起きることを前提とした強靭な忍耐力と、自らが現場を監督するほどの覚悟が求められている。
【編集:Eula】








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