フィリピン屈指のリゾート地、セブ島の土産物店でひときわ目を引く黄色いパッケージがある。現地を代表する伝統菓子「オタップ」だ。
楕円形の独特な形状を持つこの菓子は、何層にも薄く重ねられたパイ生地を丹念に焼き上げたもので、表面にはたっぷりと砂糖がまぶされている。一口かじれば、繊細な層が瞬く間に崩れ、心地よい音とともに素朴で深みのある甘さが口いっぱいに広がる。

その他の写真:セブ島名産の伝統菓子オタップ

 「ジーン・エスペシャル」などのブランドが手がけるオタップの原材料は、小麦粉や新鮮な卵、ショートニング、砂糖など極めてシンプルだ。30グラム当たりの熱量は130キロカロリー。素材本来の風味を活かした伝統の製法が守られている。2026年3月現在、流通している商品の賞味期限は同年8月末と、加工菓子としては比較的短めに設定されている。これは保存料などに頼りすぎない、素材の鮮度を重視した姿勢の表れとも受け取れる。

 この菓子の最大の特徴は、手に取るだけで崩れてしまいそうなほどの「脆さ」にある。その繊細さゆえ、日本への持ち帰りには細心の注意を要するが、それこそが丁寧な手仕事の証であり、贈る相手への誠意を示す土産品として重宝されてきた。

 フィリピンには「パサルボン」と呼ばれる、旅先から家族や友人に土産を贈る習慣が根付いている。セブの海風を感じさせるような軽やかな食感のオタップは、まさにこの文化を象徴する一品といえるだろう。割れやすいという欠点さえも、この菓子の個性を彩るかけがえのない魅力となっている。

【編集:Eula】
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