世界では近年、女性の健康課題や働き方の選択肢拡大が重要な社会テーマとして議論されている。国連が掲げるSDGsでは「すべての人に健康と福祉を」「ジェンダー平等を実現しよう」が主要目標に位置付けられており、女性が自らの体と働き方を主体的に選べる社会づくりが各国で模索されている。
こうした流れの中で、日本でも女性特有の健康課題と経済的自立の両方を支援する取り組みが広がり始めている。

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 その一つとして注目されているのが、婦人科系の悩みに特化した足つぼ療法を広める活動だ。足つぼセラピストの育成スクールを運営する林田裕子氏は、東洋医学の考え方をもとにした足つぼ施術を広めるとともに、女性が自宅サロンなどで働ける仕組みづくりにも力を入れている。これまでに育成した受講生は累計で約550名を超え、全国各地で活動するセラピストが生まれているという。

 女性特有の不調は、生理痛、更年期、不妊、子宮筋腫、子宮内膜症など幅広い。これらの症状は日常生活や仕事に影響を与えることも少なくないが、対処方法は薬による治療が中心になるケースが多いとされる。林田氏は、こうした状況に対して「女性が体のケア方法を複数の選択肢から選べることが大切だ」と話す。

 足つぼ療法は、足裏を刺激することで血流を促し、体の巡りを整えるという東洋医学的な考え方に基づく施術だ。足裏は心臓から最も遠い部位であり、そこを刺激することで全身の血流が活性化し、体温の上昇や体調改善につながる可能性があるとされている。西洋医学のように明確なエビデンスを重視する医療とは考え方が異なるが、体全体のバランスを整える方法として一定の支持を集めている。

 林田氏がこの分野に関心を持ったきっかけは、自身の生理痛の経験だった。学生時代から強い痛みに悩まされ、毎月のように薬に頼る生活が続いていたという。
そんな中で出会ったのが婦人科専門の足つぼ療法だった。当初は「足裏を押すだけで体が変わるとは思えなかった」と振り返る。しかし実際に施術を受けると症状が軽減し、体調の変化を実感したことで考え方が変わったという。

 その体験から「同じ悩みを持つ女性に伝えたい」という思いが生まれ、セラピストとして活動を開始した。未経験からのスタートだったが、約5年間で施術した人数は1000人以上にのぼるという。体感ベースではあるものの、生理痛の軽減や体調改善を感じたという声は多く、頭痛の改善や子宮筋腫の縮小を報告する利用者もいたとされる。

 もう一つの転機は、出産後の働き方だった。3人の子どもを育てながら社会復帰を考えた際、扶養内のパートかフルタイムの正社員という二つの選択肢しか見えなかったという。収入や時間の面で理想に合わないと感じた林田氏は、自分で仕事をつくる方法として起業を選んだ。自宅サロンからスタートした活動は、徐々に口コミで広がっていった。

 育成事業が本格化したのは2020年の新型コロナ流行の時期だった。サロンの営業を一時休止した際、電子書籍を制作してLINE登録者に無料配布したところ、セラピスト養成についての問い合わせが相次いだ。
当初は育成事業を計画していなかったが、需要の高さを受けてスクールを開始したという。

 講座は約3カ月間で、足つぼ施術の技術だけでなく、価格設定、集客方法、SNS発信、ビジネス設計なども指導する。受講生の多くは女性で、副業として月5万から10万円程度の収入を得るケースもあれば、専業として月100万円規模の売上を目指す例もあるという。特に地方在住者の参加が多く、医療機関が少ない地域では婦人科ケアの新たな選択肢として関心が高まっている。

 林田氏は今後、自宅サロンの支援に加え、整骨院やエステサロンなど既存の店舗に技術を導入する取り組みも検討している。女性が自分の体をケアできる方法を広げると同時に、働き方の可能性を増やすことが目標だという。

 女性の健康支援と女性の経済的自立を同時に後押しする取り組みとして、足つぼ療法を通じた活動は広がりを見せている。SDGsが掲げる健康とジェンダー平等の理念を背景に、日本発の女性支援モデルとして今後の動向が注目されそうだ。
【編集:Y.U】
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