2026年4月、アジアの航空業界がかつてない逆風にさらされている。英BBCニュースなどが伝えたように、中東情勢の急速な悪化に伴う国際原油価格の高騰が、各社の経営基盤を揺るがしている。
韓国最大手の大韓航空は4月1日から全社的な「緊急経営体制」へ移行した。朝鮮日報や毎日経済新聞など韓国主要メディアの報道を総合すると、今回の事態は単なるコスト増にとどまらず、パンデミック後の回復基調にあった航空産業の構造そのものを脅かす深刻な局面にある。

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 ■ 中東紛争が引き起こした燃料価格の異常な急騰
危機の発端は、2026年2月末に発生した米国によるイラン空爆を契機とした中東紛争の拡大だ。これにより航空燃料価格は短期間で倍増した。大韓航空が社内向けに示した資料では、4月の燃料補給単価は1ガロン(約3.8リットル)あたり450セントに達する見通しで、事業計画で想定していた220セントの2倍を大きく超える。
航空燃油は航空会社の営業費用の2~3割を占める最大のコスト項目である。韓国メディアは、燃料価格の急騰に加え、対ドルでのウォン安が輸入燃料の支払い負担をさらに押し上げていると指摘する。

 ■ 大韓航空が踏み切った緊急経営体制
大韓航空の禹基洪(ウ・ギホン)社長は3月31日、全社員に向けて緊急メッセージを発信し、4月からの体制移行を通知した。緊急経営体制では、原油価格の推移に応じた段階的な対応策を実施する。不要不急の支出の徹底的な抑制、広告宣伝費の削減、路線収益性に基づく運航スケジュールの機動的な調整などが柱となる。
この動きは大韓航空にとどまらない。傘下のLCCであるジンエアーも同様の体制に入り、アシアナ航空も国際線の減便や運休を検討していると報じられている。
韓国メディアは「航空業界全体の非常事態」と位置づけ、連日トップニュースで扱っている。

 ■ 旅客を直撃する燃油サーチャージの急上昇
経営悪化はそのまま消費者負担に跳ね返る。燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)が急騰しているためだ。韓国の航空会社は33段階のティア制を採用しており、2026年3月時点の「段階10」から、4月には「段階18」へ上昇。5月には過去最高の「段階33」に達する可能性が高いとされる。
これが現実となれば、韓国~米国往復の燃油代だけで100万ウォン(約11万円)を超える計算となり、旅行需要の大幅な減退が懸念される。航空各社は燃料価格変動リスクを抑えるヘッジ取引を導入しているが、今回の急騰はその防壁を容易に突破した。

 ■ アシアナ統合を控えた大韓航空の構造的課題
大韓航空にとって今回の危機がより深刻なのは、アシアナ航空との統合プロセスが最終段階にあるためだ。統合に伴う巨額のコストが発生する中、本業の収益が燃料高で圧迫されることは、新体制の船出に影を落とす。
また、資本力に乏しいLCCの苦境はさらに深刻だ。韓国政府は26兆ウォン規模の補正予算を編成し、原油高対策に10兆ウォン超を充てる方針だが、航空業界への直接支援がどこまで及ぶかは不透明だ。

 ■ アジアの空の覇権を巡る競争にも影響
韓国メディアは今回の事態を、仁川国際空港のハブ競争力低下につながりかねないと分析する。
燃油高により乗り継ぎ客が減少すれば、アジアの航空ネットワークの要として築いてきた地位が揺らぐ可能性がある。
大韓航空は「単なるコスト削減ではなく、経営体質を強化し将来の成長基盤を固める機会とする」と強調するが、中東情勢の長期化が予測される中、先行きは依然として不透明だ。
航空各社は燃費性能の高い最新鋭機への更新を加速させるとともに、非航空部門での収益確保を急ぐ必要がある。韓国紙の論評は、政府による税制支援や着陸料の減免など官民一体の対応を求めるとともに、国民に対しても「高い航空運賃」という新たな現実を受け入れざるを得ない時代が到来したと警鐘を鳴らしている。
【編集:af】
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