フィリピンの街角で日常的に見られた、泡まみれの車と威勢の良いスタッフの姿。しかし今、その光景に異変が起きている。
中東情勢の緊迫化に伴う世界的な原油高の影響を受け、フィリピン国内のガソリン価格が急騰。2026年4月現在、ガソリン価格は1リットルあたり90~110ペソを突破し、庶民の家計を直撃している。この煽りを最も受けているのが、移動コストの増大に伴い贅沢品としての側面が強まった「洗車サービス」だ。

その他の写真:洗車屋 2026年4月12日撮影

 ダバオ近郊で洗車店を営む店主は、悲痛な面持ちでこう語る。「以前は週末になると1日20台以上の客が来たが、今は半分以下だ。客は『洗車に250ペソ払うなら、その分を少しでもガソリン代に回したい』と言うんだ」。車を綺麗に保つことは、フィリピンのドライバーにとって一種のステータスでもあった。しかし、食料品などの生活必需品や、日々の通勤コストが膨らむ中で、洗車は「真っ先に削られる出費」となってしまった。

 客数の減少に加え、店舗側も厳しい状況に置かれている。水道ポンプを稼働させる燃料費、さらには洗剤などの資材価格も上昇しており、経営を圧迫している。一部の店舗では、外装のみを短時間で洗う格安プランの導入や、給油とセットでの割引といった苦肉の策を講じているが、客足の回復には至っていない。写真の中の赤いミニバンを包む豊かな泡は、一見すると活気ある光景に見える。
しかし、その裏では、燃料価格という抗えない「波」に飲み込まれまいと、街の洗車屋たちが必死に耐え忍ぶ厳しい現実が隠されている。
【編集:fa】
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