【その他の写真:2019年、国軍批判が刑法違反罪に問われ公判に出廷したミンティンココジー氏(ヤンゴン、撮影:北角裕樹)】
調査によると、4年間で表現の自由にかかわる罪で訴追された人数は1,051人。中でも文民政府側が告訴する形で事件化したケースが約半数の251件に上り、国軍側が告訴した52件を大きく上回った。国軍のみならず、文民政府も表現の自由を抑圧していることが浮かび上がった形だ。
訴追されたのは、495人(約47%)が一般市民で、続いて市民活動家が326人(約31%)、メディア関係者が67人(約6%)、政党関係者が60人(約6%)。宗教関係者の27人(約3%)やアーティストの24人(約3%)も対象となっていた。地域別ではヤンゴン管区が最も多かった。
利用される法律では、サイバー空間での名誉棄損を広範に禁じる条項がある電気通信法が229件(約41%)、デモの方法を定める平和的集会法91件(約17%)などがあった。このほか、国軍批判を禁じる刑法や、テロ組織への支援を禁じる非合法結社法などで立件される例があった。
記者会見でアッタンの調査担当者のサウンカ氏は、「犠牲者の中にはジャーナリストや活動家だけでなく、一般市民もいる」と指摘。続いて「スーチー政権が表現の自由を尊重しているとは言えない」と批判した。
現政権下で表現の自由を侵害する事件としては、2018年にロイター通信の記者2人が国家機密法違反の罪で有罪判決を受けたほか、2019年に著名映画監督のミンティンココジー氏が国軍批判を禁じる刑法の規定に抵触したとして有罪判決を受けた例がある。市民活動家や学生団体メンバーが行なったデモが平和的集会法に問われることもある。
【取材/執筆:リンニャントゥン】